マサバってどんな魚?
誰もが知っている食卓の代表である魚がこのマサバです。
サバと言っても同じくゴマサバという種類がおり、両方とも一般的に「サバ」と呼ばれています。
体型、サイズ・大きさ
マサバは、細長い紡錘形状の体型をしており、サイズは30センチから50センチほどになります。
断面は平たい楕円形で、ゴマサバより平たいため、「ヒラサバ(平サバ)」とも呼ばれます。
外見の特徴
マサバの外見の特徴として、背側は青緑色をしており、サバ独特の黒い曲線模様(虫食い模様)が一面に走っています。
お腹側は斑紋などはなく、銀白色です。鱗はかなり細かいのが特徴です。尾びれが黄色っぽく、背ビレの棘は、9〜11本ほどになります。ゴマサバは10〜12本ほどになり、ゴマサバと見分ける時に背ビレの棘で見分けることも稀にあります。
サバと呼ばれるものには、マサバとゴマサバがいる
実はサバと言っても、一般的にサバと呼ばれているものには「マサバ」と「ゴマサバ」がいます。それぞれ別の種になります。
マサバとゴマサバの違い
マサバを説明するうえでゴマサバの存在は欠かせません。
そのためまずは、マサバとゴマサバの違いについて見ていきます。
以下がゴマサバです。マサバとの違いについて見ていきましょう。
かなり似ているマサバとゴマサバ
見分けるポイントさえ理解していれば、見分けるのは簡単ですが、それでも個体差によります。
釣りたての時などは模様が浮き出ていない場合も多く、見分けが難しいこともあります。そして、やはりどうしても斑紋での判別ができない個体もいたりします。その場合は背ビレの本数で見分けます。
マサバとゴマサバの見分け方
マサバとゴマサバの主な見分け方は以下です。
主には体のゴマ模様があるかないかで判別がつきます。
ただ、稀にその模様がわかりにくいものもいます。
その場合は、背ビレの棘の数を数え、9本に近いほうがマサバで12本に近いほうがゴマサバとなります。
ただし、この見分け方も「中間の11本だった場合はどっちやねん!」となりますよね。
その場合は、背ビレの基底長と、尾叉長の比率計算で見分けることになります。ここでは割愛します。(まあそこまでして見分けたいのか?という疑問についてはスルーしてください。。)
ですが、マサバとゴマサバは味わい・食味が若干異なり、旬の時期も違います。これについては後述します。
ここでクイズです。
以下は、マサバかゴマサバのどちらでしょうか?
わかりやすいかもしれませんが、正解は…..「ゴマサバ」です。
でも「お腹に模様ないじゃん!」と思った方もいるのではないでしょうか?
ゴマサバでも腹側の模様が薄いものがいます。ただ、以下の部分で見分けることができます。
腹部のゴマ模様が薄くても、中央にあるミシン目状の斑点の帯は、ゴマサバ特有の模様となります。そのため腹部に目立った模様がなかったら、中央にこのミシン目状の模様があるかをチェックしてみましょう。これがあれば、それはゴマサバです。
それでは以下の切り身はどのサバになるでしょうか?
正解は…..マサバでもゴマサバでもありません。すみません。
これはタイセイヨウサバ(セイヨウサバ、ノルウェーサバ)と言われるものです。
ノルウェー産のサバとして有名なサバです。
マサバやゴマサバとの見分け方は、背中の模様を見ます。マサバやゴマサバよりもはっきりとした縞模様になっているのがわかりますよね。
日本人だと、なんとなく国産以外の魚は味が劣ると考えがちですが、このタイセイヨウサバは時期によりますが、脂がたっぷりとのっていてとても美味です。
実は日本の末端市場で使われているサバの約7割がタイセイヨウサバになります。
回転寿司や缶詰、一部の干物とか、みんなが普段食卓で食べているサバの多くがこのノルウェー産のタイセイヨウサバだよ!
生態
マサバは日本全国と、全世界の亜熱帯・温帯海域に分布しています。
回遊する魚なので、日本近海の場合は主に関東から東北沿岸、日本海の沿岸、東シナ海付近となります。
マサバは肉食性で、動物性プランクトンや、イワシやアジなどの小魚、甲殻類、イカ類などを食べます。
沿岸域の表層の50mから100mほどで大群を作り回遊します。
春から夏は北上し、秋から冬は南下するという回遊を行います。ただ、これらは遊泳グループによって異なります。
マサバの産卵期
産卵期は地域によって異なりますが、主には2~8月頃とされています。産卵のために北上するため、南の地方ほど産卵期は早く、九州で3月から4月頃、東北で5月頃、北海道で6月頃となります。
これに対し、ゴマサバの産卵期は真逆で、12〜6月頃とされています。似通っている種なのに、このように真逆のタイミングというのはおもしろいですね。
マサバの味わい・食味
皆さん一度は食べたことがあるでしょう、サバの食味についてみていきましょう。
マサバの身は、赤みがかった身質で、血合い部分の割合が大きいです。
脂が乗っているとねっとりと濃厚な味わいがあり、サバ特有の風味が味わえます。
マサバに比べてゴマサバは身が柔らかく、水分量が多いとされます。
マサバの食べ方・調理法
マサバはどのように料理をしても、サバ特有の旨味や風味が出るのが特徴です。
おすすめの調理方法としては、しめサバ、棒寿司、塩焼き、サバの煮付けなどがあります。
調理方法は多岐にわたり、缶詰や干物、ハンバーガー、おやつとしてさばスティックなどにもされます。
さばを読む、サバの生き腐れ
サバは水分量が多い魚であり、内臓に含まれる消化酵素で自己消化を行うことから、痛むのが早い魚です。
そのため「さばを読む」という言葉や、「サバの生き腐れ」という言葉があります。
「さばを読む」という言葉は馴染み深い言葉ですよね。数をごまかす時に使われる言葉です。
これは、昔サバを数える時に、痛むのを気にして急いでサバの数を数えなければならず、サバの数を適当に誤魔化していたことが所以です。
アニサキスにも注意
サバはアニサキスがいることで有名な魚です。
アニサキスとは線虫の一種で、生きたまま人の胃の中に入ると、胃壁に食らいつき激痛をもたらすという厄介な寄生虫です。寄生虫と聞くと「食べたら寄生するのでは?」と不安になる人がいますが、人間に寄生することはなく、生きたものを食べても一週間ほどで死滅します。ただ、その間に激しい痛みを味わう可能性があります。
しかし、アニサキスを警戒するがあまりに、せっかくの生魚の美味しさや、伝統料理を食べなくなるのはとてももったいないことです。アニサキスは適切に取り除いたり、冷凍や加熱をしたり、咀嚼でかみくだくことで害はありません。
実際に皆さんが一度は食べたことがあるかもしれない「サバ缶」などにもそれなりの数のアニサキスが入っています。ただ死滅しているので何も問題ありません笑
生食する場合は急いで内臓を処理する
サバに限らず、魚の多くは内臓にアニサキスがいます。寄生していた宿主が死ぬとアニサキスは内臓から身へと乗り移ってきます。
そのため、サバを生食したい場合は、いち早く内臓を取り除くことが大切です。
そして当然ですが、さばいた後に入念な目視でのチェックが必要になります。これらのことに気を付けていれば大体のアニサキスは予防することができます。
まれにしめ鯖は酢で処理されているからアニサキスは大丈夫だ、という人がいますが、アニサキスは酢では死滅しません。
どうしても怖い場合は一度冷凍を
アニサキスがどうしても怖いという場合は、一度冷凍をしましょう。マイナス20度で24時間以上冷凍することでアニサキスは死滅します。アニサキスが死滅してから、しめ鯖などの料理にすると良いでしょう。ただ、個人的にはやはり一度冷凍すると味が落ちるな、と感じます。特に家庭の冷蔵庫だとそう感じやすいです。
下処理・臭み取りが大切
とても痛みやすいサバですが、やはり臭みも出やすい魚です。そのため調理の際は臭み取りを行うことも大切です。臭み取りの方法は調理法によって変わりますが、一般的な方法としては、熱湯での霜降りや、塩を振る、酒や生姜で臭みを取る、などの方法があります。
マサバの旬
マサバの旬は一般的に秋から冬にかけてと言われています。地域差がありますが、9月頃から翌年の2月頃までと言われ期間が長いです。
産卵期を終え、冬に向けてエサをたくさん食べて脂肪を蓄えたマサバは脂が乗っています。
秋サバは嫁に食わすな
秋頃から旬となるサバは、脂肪分が増えてとても美味しくなるため「秋サバは嫁に食わすな」ということわざがあります。
この言葉には複数の説がありますが、一般的に言われている説は、姑目線の言葉で「秋サバはとても美味しく、嫁に食べさせるのはもったいない」という言葉になります。(なんて意地の悪い姑や、、)
それほど秋のサバは美味しいということでもありますね。
通年で味が安定しているのはゴマサバ、秋冬ならマサバ
地域によって変わるかもしれませんが、通年で味が安定しているのはゴマサバだと言われています。
マサバの旬は秋から冬と時期も長く、マサバの旬の時期であれば、マサバのほうがおすすめとされています。
秋冬はマサバ、春夏はゴマサバがおすすめです。
マサバは春や夏などの時期は、やはり産卵によって身がやせ細ってしまうので味が落ちるとされています。逆にゴマサバは秋から冬が産卵期で旬が夏なので、春から夏の時期はゴマサバのほうが美味しいかもしれません。
ただ、地域差や個体差もあるので、一概にどっちのほうが美味しいかとは言えないません。こればかりは実際に魚屋さんに行って実際に見てみたり、話を聞いてみるといいでしょう。
目利き・選び方のポイント
サバは鮮度が落ちるのが早い(足がはやい)ので、鮮度の見極めが重要です。
基本的な鮮度を見分けるポイントは魚全般で同じです。
- 目に張りがあって澄んでいるか?
- エラが鮮やかな赤色をしているか?
- お腹が固く体に張りがあるか?
- 体表が乾いておらずウロコがしっかりと付いているか?
- 模様がはっきりとしているかどうが?
サバは内臓からどんどん傷んでいくので、やはり軽くお腹を押してみると良いでしょう。ぶよぶよとしたものは古くなっています。逆に固く張りがあるものは新鮮です。
肛門がしっかりキュッと閉まっていて、体液が流れ出ていないかどうかも見てみましょう。
目やエラはあくまで鮮度を見る基準の一つですが、サバは痛むのが早いので、エラを見るという手法は実用的でないように思います。目も流通過程でたまたま濁ってしまった、というものもあります。
美味しいものかどうかを見分けるポイントとしては、やはり丸く太っているものがおすすめです。
生食する場合は、活け締めされたものかどうかもポイントです。
体高を見る時は、腹側ではなく背側に注目すべき
魚が太っているかどうかを見るポイントとして、体高を見るというものがあります。
ただこの方法は注意が必要です。というのも、魚は食べたエサがお腹に詰まっていたり、産卵の関係で身ではなく卵に栄養が向いてしまっていたりするからです。
そのため、背中が盛り上がっているかどうかを見てみましょう。
背中側が盛り上がっているものは、身に脂が蓄えられているので美味しいです。
干物を選ぶ時のポイント
干物は買う時は販売店やパッケージ、値段でなんとなく良し悪しが分かるかと思いますが以下のポイントを見てみましょう。
- 全体的に丸みがあり、ふっくらとしているもの
- 腹部が白くなっていて脂ののりがわかるもの
- 機械開きより、手作業で開かれているもの
切り身を選ぶ時のポイント
切り身の選び方は肉厚ものものを選ぶようにします。ノルウェー産のものは脂が多く美味しいものが多いです。
生サバであれば、なるべく表面が乾いておらず、下に敷かれている吸水紙をチェックして、ドリップ(身からでた汁)がたまっていないものを選ぶようにしましょう。
他にも、捌き方が原因で血が混じってしまい、身に血が付いたままパック詰めされているものなどがあります。これは身が血生臭くなってしまっている可能性があるので注意が必要です。
マサバの釣り方・漁法
一般的な釣り方にはサビキ釣り、カゴ釣り、ルアー釣りがあります。
サビキ釣りでは袋に解凍したアミエビを詰めます。
漁法
商業的な漁獲方法は、国内では巻き網漁、定置網漁、刺し網漁、立縄漁法が主にあります。
サバのブランド
サバは日本全国で漁獲される魚であるため、日本各地でサバの「ブランド化」が進んでいます。
それぞれ違いがあり、食べ比べてみるのも楽しいですね。
マサバのものを紹介しますが、ゴマサバも含まれているブランドもあります。
以下代表的なものをご紹介します。掲載順は順不同です。
関さば
参考:大分市/関あじ・関さば
関サバは、大分県の豊予海峡・豊後水道で一本釣りで獲られるマサバです。全国的に有名なブランドサバなので一度は聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。同じく関アジもいます。
特徴は「瀬つき・居付きのサバ」を、傷めないように一本釣りし、活かしたまますぐ漁港に持ち帰り、持ち帰った後すぐに漁港の生け簀に移すというものです。徹底した品質管理が行われます。旨味と歯ごたえが特徴で干物でも展開されています。
松輪サバ
参考:松輪サバ|神奈川県|全国のプライドフィッシュ|プライドフィッシュ
松輪サバは、東京湾三浦半島南部の松輪地区で漁獲されます。旬の時期としては10月~12月頃。
波が穏やかでエサが豊富な東京湾の海域で育つ居付きのサバです。
金華さば
金華さば:金華さば
金華さばとは、宮城県金華山沖で獲れ、石巻港に水揚げされた旬の時期の大型のマサバになります。旬を見極めた決められた時期にのみ漁獲され、個体のサイズを見極め、大型のものが金華さばとして扱われます。
八戸前沖さば
参考:8saba.com – 八戸前沖さばブランド推進協議会オフィシャルサイト
八戸前沖さばは、三陸沖以北で漁獲し八戸港に水揚げしたさばのことを言います。マサバとゴマサバが対象となります。本州最北端に位置する漁場で、水温が低くサバには脂がのっていて、「日本一脂がのったサバ」と評価もされています。
旬さば
参考:旬さば(ときさば) _ 松浦市の観光情報サイト「松恋」
10〜2月の期間に、長崎県の五島海域から対馬海峡で獲られるマサバになります。漁獲場所、時期、サイズなどが市場で厳選され、認められたものだけが旬サバとして出荷されます。
北釧鯖
北海道釧路港で水揚げされたサバになります。寒い海のため、身が締まり脂がのっているのが特徴です。
銚子極上さば
日本最大である銚子漁港に水揚げされる700g以上の大型サバになります。
玄さば
佐賀県唐津の玄界灘で漁獲されるサバです。サバをマイナス60度の超低温で冷凍されることによって、身焼けさせずに刺身で食べられるように流通させています。同様に玄あじもいます。
ぼうぜ鯖
ぼうぜ鯖は養殖ブランドの鯖です。
兵庫県姫路市の坊勢島で養殖されたサバです。昨今では養殖は天然か同等か、ものによっては上回るくらい美味しいものもあるので、こういった養殖ブランドはとても注目です。
お嬢サバ
ネーミングがとても特徴的なサバブランドです。
鳥取県岩美町で陸上養殖されているサバです。地下海水を使って綺麗な水で養殖することで、サバで心配な寄生虫などをできる限り除去しているサバです。
JR西日本と鳥取県が共同開発・プロデュースしています。
唐津Qサバ
唐津市と九州大学の共同研究による完全養殖のマサバです。いかに美味しく安全に生のサバを食べられるかに注目し、技術力を駆使したサバブランドです。現在では出荷量を増やし、東京でも食べられています。
ちなみに名前である「Q」は九州大学のQと、クオリティのQ、QuestionのQが意味としてあるようです。
ひむか本サバ
宮崎県延岡市で無投薬養殖されたサバです。出荷前には胃の内容物の除去期間を設け、400g以上のものを神経締めして出荷しています。
長崎ハーブ鯖
長崎県松浦市、佐世保市でハーブを配合したエサを与えた養殖のサバです。
ハーブには様々な効能があるとされ、サバ特有の臭みについても向き合ったサバでもあります。