マアジの特徴
マアジは日本全国どこでも釣れ、味も良く、多くの家庭の食卓でも親しみがある大衆魚の代表と言える魚です。基本的に「アジ」と呼ばれるものは、このマアジのことになります。
マアジの見た目の特徴として、側線があります。
マアジの側線は頭から尾まで走っており、深くカーブしています。
側線上にゼイゴ(ゼンゴ)という稜鱗があるのが特徴的です。このゼイゴは硬く鋭いため、調理方法によって取ることがあります。
キアジ(黄鯵・金鯵)とクロアジ(黒鯵)
分類上は同じマアジでも、マアジには「キアジ型」と「クロアジ型」と呼ばれるものがあり、分けられています。
キアジ(黄鯵)とは
キアジとは、浅瀬や海峡、湾口部、内湾に生息し、その場所に根付いて移動をしないアジのことを言います。居付き、根付き、瀬付きとも言われます。
体色が明るく黄色っぽくなることから、キアジ(黄アジ、金アジ、黄金アジ)と呼ばれます。
エサが豊富な場所に居座り、あまり移動もしないため、よく太っていて脂が多く、身は白っぽい色をしています。脂が乗っているため舌触りもなめらかで、ねっとりしています。
小ぶりでも美味しいため、各地でキアジがブランド化されています。
キアジの特徴
- 体色の黄色みが強い
- 体高が高く太っている
- 脂が乗っていて身が白っぽい
- 根付きで一箇所に留まる
クロアジ(黒鯵)とは
クロアジとは、沖合の深場を回遊するアジのことを言います。
スーパーや加工品として店頭に並ぶアジのほとんとがこのクロアジです。
体が黒っぽい色のため、クロアジ(黒アジ)と呼ばれます。他にもノドグロアジ(喉黒鯵)とも呼ばれることがあります。
沿岸よりエサが多くない沖合を常に泳いで回遊しているため、キアジより痩せていてスマートです。
クロアジの特徴
- 背が黒い
- 体高が低く痩せていてスマート
- 脂が少なく身は赤っぽい
- 沖合を回遊する
脂が多いキアジのほうが美味しいと言われがちだけど、クロアジもそこまで味が劣るわけじゃなく美味しいよね。
アジ(鯵)の名前・漢字の由来
アジの名前の由来は、「味が良い魚」のため、「味」からとってアジと言われるようになったとされています。わかりやすいですね。
漢字の「鯵」の由来にはいくつか説があり、1つ目は「鯵」の漢字に使われている「参」という文字が、旧暦の3月(太陽暦でいう5月頃)を意味し、その頃にアジが旬を迎えるため「鯵」となったという説です。
他には、もともと鱢という漢字が使われていて、それが書き間違えられて「鯵」となった、という説があります。
鱢という漢字には「生臭い魚」という意味がありますが、あまり深くは意味が無いと言われています。こちらの説が有力だとも言われています。
他には、「美味しくて参ってしまう」、群れになって行動することから「多くが入り交じる」という意味で、参という文字が使われ「鯵」となったとされる説があります。
生態・漁法
マアジは日本全国の沿岸から沖合の中底層に生息しています。
日の出ている日中によく活動する昼行性で、水温20度以上から活発になり、イワシ類や、シラス、イカ類、甲殻類、多毛類などをよく食べます。
マアジの産卵期
マアジの産卵期は地域によって異なります。
西日本では年明けから初夏(1〜5月)、関東沿岸では初夏から夏頃まで(4〜7月)、東北では7月頃、北海道では8月頃と、地域によって違います。
1〜11月の間は、日本のどこかでアジが産卵期を迎えていることになります。
マアジの成長
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豆アジ:5〜8cmほど
5〜8cmほどの小さいアジのことを豆アジ・小アジと言う。まるごと揚げて、唐揚げや南蛮漬けにすることが多い。
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マアジ
大きいものは全長50cmほどになる。
マアジの旬
マアジの旬は、主に初夏〜夏の時期だとされています。
産卵期が地域によって異なるため、地域によって旬の時期も異なりますが、基本的には産卵期前がアジの旬となります。
地域によって産卵期が違うから、その地域で美味しい時期がいつなのかを調べてみるといいね!
味わい・食味
「味が良い」ということからアジと呼ばれるだけに、とても美味しく人気の魚です。
青魚特有の旨味があり、透明な身は適度に硬く弾力があります。
脂が乗っているものは少し白く濁った色をしており、ねっとりとしていてトロッとした甘さがあります。
青魚ではありますが、特有の臭みなどはあまりなく、お刺身はもちろん、焼き物や揚げ物など、どんな料理でも美味しく食べることができます。
目利き・選び方のポイント
マアジには黄アジ型と黒アジ型がおり、それぞれ脂の乗りが異なりますが、基本的には脂が乗っているものが美味とされ、値段も高値です。
- 丸く太っていて、頭が小さく見えるもの
- 目に張りがあり澄んでいるもの・エラが鮮やかな赤色
- お腹が硬く肛門が締まっているもの
- 尾柄(尻ビレから尾ビレの間)が肉厚なもの
- 体に光沢があり、乾いていないもの
- 体や身が黄色・白っぽいものは脂が乗っている
脂の乗ったアジの見分け方として、体高や頭の付け根の盛り上がりを見ます。
太っているアジは体高が高くなりますが、頭のサイズは変わらないため、結果的に頭が小さく見えます。
目は張りがあり澄んでいるものが良いですが、水氷で流通しているものはどうしても目が濁ります。この場合は鮮度には影響がありません。
鮮度が悪くなってくると、体表が乾き、皮がしわしわとしてきます。
市場流通
一年を通してたくさん漁獲されるマアジは、重要な海産資源で、漁獲許容量(TAC)も定められています。
漁獲量が多い産地としては、長崎県、島根県となり、他に福岡県、愛媛県などが続きます。
網で大量に漁獲される黒アジは全国に流通し、価格が安く食卓でもおなじみです。
一方で、近海で釣りなどで漁獲される黄アジは高値です。
有名な産地・ブランド
マアジは全国で漁獲されることから、全国各地にアジのブランドがあります。
長崎旬あじと長崎ごんあじ
アジの漁獲高が国内トップである長崎県には、アジのブランドとして、「旬あじ」と「ごんあじ」と呼ばれるものがあります。
旬あじとは、春から夏の時期(4〜8月)に、対馬海峡から五島列島の海域で漁獲される100g以上のアジのことを言います。
ごんあじとは、長崎県の五島灘の海域で、まき網によって傷つけないように丁寧に漁獲された黄アジ型のものを、急いで海上の生け簀に移し、そこから1週間〜10日ほどエサを断ったもののことを言います。
なぜエサを断つのかと言えば、魚は漁獲時に暴れるため、その影響で体に乳酸が溜まります。その状態だと肉質が落ちているので、一旦生け簀に移して時間をおくことでストレスを軽減させ、溜まった乳酸を減らす狙いがあります。また、エサを断つことでアジは体の危機反応として、蓄えている脂肪を体中に分散させようとするため、身全体に脂が行き渡るようになります。
参考:柏木水産|長崎の旋網漁業、冷蔵冷凍倉庫業、水産加工業 ごんあじの紹介 ごんあじとは
一本釣りの「野母んあじ」
同じく長崎県で、「野母んあじ」と呼ばれるブランドのアジがあります。
長崎市の野母崎三和漁協の登録商標で、「野母崎のアジ」を長崎の方言で表現して「野母んあじ」とネーミングされています。
野母んあじの特徴は、漁師が一本釣りで漁獲するということです。
釣られたアジは、船内の生け簀に移され、そのまま活魚の流通センターの生け簀に運ばれます。そこから体長が26センチ以上、重さが300〜500グラムほどのものを厳選し、それらを野母んあじとしています。
大分の関あじ
大分県佐賀を代表する魚のブランドで「関あじ」があります。同様に「関さば」も有名ですね。
北は開門海峡、東には瀬戸内海、南は太平洋からなる豊予海峡がある佐賀関では、「速吸の瀬戸」と呼ばれるエリアがあり、とても複雑で激しくぶつかりあう潮流があります。
複雑な潮流によってプランクトンが豊富に存在し、マアジのエサがたくさんあるため、この海域のマアジはとても脂の乗りが良いことで有名です。
とても激しい潮の流れのなかで、漁師によって一本釣りで漁獲されます。(潮の流れが激しいため、網を使った漁が難しい)
一本釣りのため、状態が良く、釣り上げた後はすぐに船の生け簀に移され、生かしたまま港に運ばれ、別の生け簀に移されます。
出荷時には一尾ずつ活け締め・神経抜きが手作業で行われます。
味はとても良く、価格も高値です。
愛媛の岬あじ
大分の関あじと同じく豊予海峡で漁獲されるマアジになります。
関あじと同じ海域で獲られるアジで、水揚げされる漁港によってブランド名が変わっています。
岬あじも関あじと同じく一本釣りで、生け簀で蓄養されてから出荷されるアジです。
ただし、愛媛県の岬あじは、過去に巻き網漁のものが混ざって流通されていたことが発覚し、漁協組合はこの岬あじブランドを返上しています。