アカカマス(カマス)ってどんな魚?
アカカマス(カマス)とは、体長が平均で30〜40cmほどで、最大で50cmくらいに成長する魚です。体の色は銀白色で、背部は黒褐色をしています。体型が細長いのが特徴的ですね。
カマスの形態
カマスは体が長細く、頭も尖っています。
下アゴが上アゴよりも長く突き出しているのが特徴的です。
また、とても鋭く強い歯を持っています。カマスは性格が獰猛で、この鋭い歯で獲物を襲うんですね。カマスを扱うときはこの歯で怪我をしないように注意しましょう。私は怪我をしたことがあります。
カマスの種類
カマスと言っても、アカカマスの他にヤマトカマス、タイワンカマス、イブリカマスなどがいます。日本で流通しているカマスは主に、アカカマスとヤマトカマスで、一般的に「カマス」と言えばこのアカカマスのことを指します。そのためアカカマスは本カマスとも言われています。
似ているアカカマスとヤマトカマスですが、簡単な見分け方として、アカカマスは名前の通り体全体が赤みを帯びた黄褐色っぽい色をしているのに対し、ヤマトカマスは体全体が黒っぽい色をしています。
上の写真はヤマトカマスです。
体の色以外にも、ヤマトカマスはアカカマスよりも口が大きく、他には鱗が小さく細かいという特徴があります。他にも背ビレ、腹ビレの位置などで見分けがつきます。
ヤマトカマスのほうがアカカマスより身が水っぽく、ミズカマス(水カマス)とも呼ばれます。そのため、主に干物などに用いられます。生で食べるのであればアカカマスのほうがおすすめです。
生態・漁法
カマスは、オホーツク海沿岸を除く北海道から九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、奄美大島、沖縄島などの範囲に広く分布しています。日本以外では、朝鮮半島、渤海、黄海、中国の東シナ海・南シナ海沿岸、西沙諸島、インド 西太平洋にも生息している魚です。
生息水深は比較的浅めにいることが多く、水深100mほどの沿岸浅場の岩礁域を、大きな群れになって行動します。生息水深は季節や地域によって異なります。主に夜間に活発的に捕食行動をすると言われていますね。
とっても攻撃的で乱暴者な魚
カマスは、とても攻撃的な性格で、主にイワシなどの魚を捕食する魚食性の魚です。
大型のカマスであるバラクーダ(オニカマス)は、人を襲うこともあり、ダイビングでは注意が必要な魚とされています。
アカカマスの産卵期
産卵期について、アカカマスは6〜7月の初夏から夏にかけて産卵を行います。似ているヤマトカマスは春から初夏にかけて産卵すると言われています。
カマスの旬
アカカマスの旬は主に2回あると言われており、脂がのる時期として10~12月の秋から初冬の時期、そして、産卵前に栄養をたくわえる時期として3~4月の春があります。
富山湾などでは9月頃から11月頃にかけて多く水揚げされます。
産卵前の春には身に栄養を蓄えて、冬の時期には脂を蓄えるんだ
ヤマトカマスの旬は夏で、初夏から8月頃とされています。日本海側ではヤマトカマスよりアカカマスの割合が多いです。
旬の時期は身に栄養や脂がのっていて美味!
アカカマスの旬の時期は脂が乗る時期と、産卵前に栄養を蓄える時期で、2度の旬があります。
旬の時期には身に栄養や脂肪がたくわえられるため、特に美味しいです。
カマスは水っぽい魚で、身も細いため、あまり刺身などには向かない魚ですが、あぶりがとても美味しく、高級寿司ネタとしても人気です。
そしてやはり冬の脂がのっている時期は塩焼きが特におすすめです。大型のカマスは脂の割合も多く、塩焼きがとても美味しいです。カマスは内臓処理をせずに塩焼きにすると、お腹の中で脂が回り美味しい仕上がりになると言われています。
味わい・食味
カマスは白身魚で身は半透明でピンク色をしています。
水分量が多い魚であり、身は若干水っぽさがあり柔らかいです。水分量が多い魚は干物など焼き物が美味しいです。
特に、ヤマトカマスは、「水カマス」とも言われるくらいで、アカカマスよりも身に水分量が多いよ。
カマスは淡泊な味の白身魚で、クセがない味わいが楽しめます。
皮目に脂が多くて美味い!
身は淡泊な味わいですが、皮に独特の風味があり脂がのっているため、定番の塩焼きでは皮ごと食べるのはもちろん、寿司ネタでも皮目をあぶるなどすることで、カマス特有の味わいを楽しめます。
カマスの栄養
カマスは白身魚で、良質なたんぱく質を豊富に含んでいます。青魚よりは低カロリーで、EPAやDHAのほか、ビタミンDやビタミンB12などの栄養が含まれています。生のカマスのカロリーは、100gあたり137kcalほどです。
カマス100gあたりのカロリーと糖質
出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
エネルギー(カロリー):137kcal
糖質:4.3g
カマスの食べ方、おすすめの調理法
カマスの食べ方の定番と言えば、やはり塩焼きです。
塩焼きにすることで、カマス特有の皮の風味も味わうことができます。大型のカマスなどは脂も多く、塩焼きなどにすることで適度に水分が抜け、ふっくらとしてとても美味しいんです。
水分量が多い魚のため、干物にすることで水分が抜け、旨みが凝縮されることから干物にされることが多いですね。干物にする際には内蔵を抜き、腹開きにするのが一般的です。
腹開きにしたあとに、お好みで5〜10%ほどの塩水に漬け込み、その後よく水気を取ってから、風通しの良い場所や、冷蔵庫などで乾燥させます。
塩焼き以外もおすすめ!
塩焼きがおすすめのカマスですが、お寿司やフライ、幽庵焼きなどもおすすめで、飲食店でも提供されています。
新鮮なカマスは、生のままの刺身としてもクセもなく甘みがあり美味しいです。
前述しましたが、生で食べる場合は、皮を剥がずに皮目を炙るなどもおすすめです。
また、さばいた後は、身に塩を振って余分な水分を抜くことで、ぎゅっと旨味が凝縮されます。
他にもお寿司としては酢締めにされることも多いです。
酢締めにしたカマスは、お酢の作用で皮が柔らかくなり、最も味わい深い皮の下の部分をお寿司として楽しむことができるんです。
棒寿司などにして提供しているお寿司屋さんが多いですよ。
目利き・選び方のポイント
カマスの鮮度や選び方を見分ける方法についてみていきましょう。
まずは、目が澄んでいて透明で、胴に丸みがあり、体に張りと艶があるものが良いです。
カマスはウロコが剥がれ落ちやすい魚なので、ウロコがなるべく残っているものは鮮度が良いと判断できます。
そしてエラもチェックしましょう。鮮やかな赤色のものを選ぶようにします。鮮度が落ちてくるとエラの色がピンクから肌色へとどんどん鮮やかさが無くなってきてしまいます。
カマスのチェックポイント!
なるべく太ったものが良いのですが注意点があります。
お腹が膨らんでいるものは、中に捕食したイワシなどの小魚が詰まっている場合と、卵が入っている場合があります。これらの見分けは難しいです。
そのため、お腹の部分の体高で見分けるのではなく、背中の盛り上がり具合、身の横幅・厚みで見分けると良いです。
お腹に食べたものがたくさん入っていると、量り売りなどの場合は無駄になってしまいますし、生ゴミも増えてしまうので注意です。
カマスの釣り方・漁法
一般的なカマスの釣り方はエサ釣りが一般的で、サビキ釣りやウキ釣り、ハリス釣りがよく行われます。
エサとしては、アオイソメやサナギ、小魚などがよく使われます。
ルアー釣りも可能で、メタルジグやミノー、シンキングペンシルなどが有効ですね。
アカカマスは夜行性であり、夜に捕食活動を行うので、ウキ釣りを行う際は電気ウキがおすすめです。
カマスは大きな群れになって行動することが多いので、一度釣れ始めると連続して釣ることができます。
また、水面近くの浅場を泳ぐことも多いため、オカッパリでも狙うことができます。
秋辺りから釣期に入り、春先まで長く続く釣り物です。ただ、潮加減に左右されやすく、エサを食わない時は全くダメであったり、エサをうまく取られてしまうなど気難しさもあります。
商業的な漁業としては、カマスは定置網、刺し網、底びき網漁業で漁獲されます。
有名な産地・ブランド
カマスは日本全国沿岸に生息し、通年漁獲されています。そのため何種類もの産地のカマスが流通しています。
主な産地としては、長崎、和歌山、熊本、神奈川県などがあり、九州が多い印象です。
特にアカカマスは関東から南で多く水揚げされます。日本海側でも「ヤマトカマス」よりも「アカカマス」の割合のほうが多いようです。取引される値段としては、アカカマスのほうが高値で取引されます。これはヤマトカマスのほうが水っぽく、食味的にはアカカマスのほうが美味しいとされるからでしょう。
カマスは、関東では神奈川県を中心に人気があり、専門の遊漁船も存在しています。また、東北以南の太平洋沿岸、新潟県あたりより南の日本海沿岸、瀬戸内海でも多く漁獲されています。
日本海側では長崎県や富山湾などが有名です。
秋の神奈川の江の島カマス
カマスの有名なブランドとしては、秋の「江の島カマス」は神奈川県のブランドでして有名です。
江の島の海は餌が豊富な好漁場!
丸々と太ったカマスは脂がのって美味ふもとに境川という川があり、栄養塩が豊富な河川水が流れ込む江の島の海。浅瀬が続くため、沿岸の流れを堰き止めて形成される潮目には多くのプランクトンが滞留します。これを餌とする魚が集まる江の島漁場は、カタクチイワシやシラスの好漁場。さらに、その魚を大好物とするカマスやサバ、サワラ、ブリなども多く定置網に入り込みます。なかでも周年を通して多く獲れる「アカカマス」は、相模湾の定置網漁のなかでもトップクラスの漁獲量。豊富な餌を食べて丸々と太った「江の島カマス」は、市場でも高い評価を獲得しています。1年を通して味の良い魚ですが、旬を迎えた10~11月の大ぶりで脂がのったものの味わいは特に最高です。
(引用元:江の島カマス(アカカマス)|神奈川県|全国のプライドフィッシュ|プライドフィッシュ)
神奈川県は全国でもトップクラスのカマスの漁獲量を誇り、かながわブランドやJF全漁連のプライドフィッシュに選定されています。
川から海へ流れこむ豊富な栄養によって、たくさんの良質なプランクトンが発生し、これをエサとする小魚が江ノ島周辺に集まります。そのため、江ノ島はカタクチイワシやシラスなども有名な漁場ですよね。そして、それを狙ってカマスも集まってくるというわけです。
雑学!カマスの名前・漢字の由来
カマスの名前と漢字の由来は、多岐にわたる説があります。
主な漢字として魳・叺・梭子魚・梭魚・魣などがあり、どれもカマスと呼びます。漢字が多くてややこしいですね。。
名前の由来・説は?
カマスの名前の由来については、口の形が叺という藁の袋に似ていることから、「叺」と名付けられたという説があります。そのためカマスの漢字でも叺という字を用いることがあります。
他にも一般的なもので「魳」という漢字があります。
これは、カマスの老成魚にもともと当てられていた「鰤」という漢字が、魚のブリと同じであったため、一部を取って「魳」の文字が使用されたという説があります。
他にも、オニカマスなどはシガテラ毒を有しており、人を殺すこともあったことから、「市」の漢字が当てられたという説や、群れになって捕食する姿が軍隊を連想させるため、「師」の右側を取って「魳」となったという説もあります。カマスの凶暴性が分かる由来ですね。
魳の由来
(引用元:これ読める?「魳」魚に帀と書いてなんて読む?【読めたらすごい魚漢字クイズ】 – sotokoto online(ソトコトオンライン) – 未来をつくるSDGsマガジン)
かますという名がついたのは、
・「織梭(しょくさ)」と呼ばれる機械に似ているから
・農作物を入れる藁でできた「叺(かます)」と呼ばれる袋に似ているから
というのが有力な説なのだとか。
他の「梭子魚」については、カマスの体形が梭(はたおり)に似ていることから、この名前がついたとされています。また、「梭魚」の漢字も、カマスの細長い体形から来ていると言われています。