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ニシン 【通称・別名】カド、春告魚

数の子などお正月料理、日本の伝統料理に欠かせない青魚!

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ニシンの特徴
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主な旬
23
全長
2035cm
身質
赤身
漁期
通年
人気度
普通
味の評価
普通に美味
希少性
普通
重要度
重要!
旬の時期
食味の良さ
産卵期
漁期
10/22
※各情報は平均的な指標であり、地域や個体によって異なります。
北海道 青森県 岩手県 宮城県

ニシンの名産地

多く出荷・流通している産地。または主な漁獲可能な産地。

ニシンの基本情報
分類
外国名Pacific herring
学名Clupea pallasii
地域名カドイワシ、カド(北海道、東北)
分布と生息域
に分布。
主な生息水深はあたりの
に生息。
漁法
釣り
寿命6〜7年
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ニシン【鰊】は、日本のお正月料理や伝統料理で欠かせない魚です。そんなニシンの特徴や生態、旬の時期や食べ方・おすすめの料理などをご紹介します!

ニシンとはどんな魚?

ニシンと言うと、日本ではお正月のおせち料理や、カズノコ(数の子)、様々な伝統料理・加工食品に欠かせない魚です。そんなニシンの特徴について見ていきましょう!

ニシンの見た目の特徴

ニシンは見た目・体型の特徴としては、流線型の体と模様などが一切ない銀色の体です。背側は青緑色でおなか側は明るく白く、鱗は薄く剥がれやすいです。
どのヒレも短く、背ビレも1基しかありません。

ニシンのサイズ

ニシンのサイズは25〜35cmほどで、主に流通しているのは25cmほどのものです。最大では60cmほどになるものがあると言われていますが、食味という観点から考えるとあまり大きくないものが望ましいとされています。

目元が充血することが多い

充血したニシン

ニシンは漁獲や流通過程で目元がどんどん充血して赤くなってきます。
別に鮮度とは関係が無いのですが、選ぶ場合は充血していないものが良いとされます。

お正月のおせちや伝統料理に欠かせない魚

おせち
おせちにニシンは欠かせない

ニシンと聞くと地域によって様々なイメージがあると思いますが、やはり有名なのはカズノコ、みがきニシン、子持ち昆布などでしょうか。

ニシンの卵!カズノコ(数の子)

カズノコ

ニシンは知らないけど数の子は知っているという人までいるくらい有名な魚の卵巣です。高級食材であり、金色に輝く卵は見た目的にも美しく、おせち料理を彩るということでお正月には欠かせない食材となっています。

ニシンの干物「身欠みがきニシン」

みがきニシン

ニシンは生だと日持ちがしない魚なので、干物にするというのが昔からの慣習でした。
江戸時代ではこの身欠きにしんを年貢の代わりに納めるということまであったそうです。

年貢の代わりに納められる魚であったため、「魚にあらず」と言われ、魚へんに「非」と書いて「にしん」と読む漢字もあります。

干物というと焼き物のイメージがありますが、身欠にしんは米の研ぎ汁などで戻してから煮込み、昆布巻きやニシン蕎麦などにされます。

子持ち昆布

ニシンの子持ち昆布

ニシンは海中の昆布の森の中で産卵を行います。
その昆布に産み付けたものが「子持ち昆布」となります。おせち料理やお寿司でも使われる高級食材です。国内のものは高級で、近年はアメリカ産のものが増えていたり、人工的に昆布に卵を漬けるなど加工されたものが出回っています。

ニシンの生態

泳ぐニシン
泳ぐニシン

ニシンは主に北半球の冷たい海域に生息している魚です。
ベーリング海峡やオホーツク海、北極海にまで生息しているため、カナダやアイスランド、ノルウェーやイギリスでも漁獲されていて馴染み深い魚です。

冷たい海域に生息する

日本では主に北海道、北日本の日本海側で漁獲が行われています。

浅めの沿岸や沖合を群れで行動しますが、表層と中層を頻繁に行き来にする魚です。
昼頃は表層付近、夜には底層に移動すると言われています。
動物性プランクトンを主に食べています。

ニシンの産卵期

ニシンの産卵期は地域によって異なりますが、2、3月の初春から5月、6月の初夏までの時期とされています。

ニシンは沿岸付近の水深1mほどの浅場にある昆布などの海藻に産卵を行います。これが子持ち昆布です。
オスのニシンは大量の精子を放出し、この精子の放出により海岸が真っ白になることがあるため、この現象を「ニシンの群来くき」と言います。

産卵で集まってきたニシンを狙うカモメ

北海道の人は、このニシンの群来がくると春が来たとなり、嬉しい現象です。

ニシンの旬

ニシンの旬は主に2〜3月の産卵前とされています。
これは初春の産卵前に卵巣や白子に栄養を蓄えているからだとされています。

ただ、産卵や回遊の関係で秋頃が美味しいとされるニシンもいます。確実なのは産卵期を終えると体力が落ちて脂も無くなり美味しくなくなるということです。捌いて見ると身が細く全体的に赤く脂が無いのが分かります。

乱獲で数を減らしたニシン

たくさん漁獲されたニシン

日本ではカズノコを目当てに、ニシンは産卵前を狙った漁獲が盛んであり、産卵された卵も子持ち昆布として商業的に獲っていたため、昔は100万トンまで漁獲されていたニシンも、今ではその数には到底及ばない現状が続いています。回復してきたと言われていますが、昔の漁獲量とはかなりの差があります。(昔は何も考えずに獲りすぎていたのが問題ですが…)

昔はニシンの豊漁によって漁師の経済が潤い、大きな家を建てる人が続出したことから、それらの人が建てる家は「ニシン御殿」などと言われることもあったそうです。

SDGsを考えると、いくらカズノコが商業的に価値があるとしても、「豊漁・大漁」と言って、獲れる時に獲りすぎる乱獲は今の日本でも問題だと言えます。

漁師の人は捕ればとるだけ収入に結びつきやすいということで、難しい問題ではあります。
しかし、ただでさえ昔からの乱獲で数を減らしたニシンを、数が戻ってきた途端にまた獲れるだけ獲っていたら同じことの繰り返しで、安定したニシン・カズノコの未来供給は難しくなるかもしれません。

ニシンの食べ方・おすすめの調理方法

ニシン科の魚に共通して言えるのが「小骨」が多いということです。
そのため、生食では工夫が必要です。
刺身にする場合は、鱧のように「骨切り」をする必要があります。
ただニシンは足が早い(痛むのが早い)魚のため、生魚は主に北海道などでしか流通することがありません。

北海道に行ったら&生のニシンと出会えたら「ニシンの刺身」「ニシンの寿司」

ニシンの刺身
ニシンの刺身

ほとんど鮮魚とてしては流通しないニシンだからこそ、出会えたら食べたいのがニシンの刺身です。寒い海で育った脂ののったニシンは、青魚特有の味の深さや旨味があり、寿司ネタとしてぴったりです。

脂ののったニシンのお寿司

お刺身の時は鹿の子切りか、鱧のように骨切りを行って食べましょう!贅沢な食べ方ですね!

ニシン蕎麦

身欠きにしんを使用した北海道の郷土料理です。

ニシン蕎麦
ニシン蕎麦

生のニシンは食べられなくても、身欠ニシンであれば多くの人が手に入れやすいです。もし身欠ニシンを手に入れたら有名な「ニシン蕎麦」を作ってみると良いでしょう。

出典:ニシン蕎麦 北海道 _ うちの郷土料理:農林水産省

主には北海道と京都が有名ですが、味付けの仕方がそれぞれ異なります。
北海道は甘めの濃い口、京都では薄口醤油を使った薄い味付けとなります。
身欠ニシンの煮付け方と、出汁の取り方によるでしょう。
魚を蕎麦みたいな繊細な汁物に入れるなんて、、と思う人もいるかもしれませんが、煮付けた身欠にしんには臭みは無く、ホロホロと崩れる柔らかい身が特徴的です。

栄養バランスが良いのがニシンそば

昔の人からしたらタンパク質摂取は大きな課題でもありました。
炭水化物は摂取しやすくてもタンパク質はなかなか難しかったからです。そのため、身欠ニシンを使ったニシン蕎麦は栄養バランスを考えるととても優れた料理です。
青魚であるニシンはDHA、EPAはもちろん、ビタミンAなどの重要な栄養も取ることができるため、ニシン蕎麦はまさに栄養食だと言えます。

定番の塩焼き「ニシンの塩焼き」

ニシンの塩焼き

旬の時期に脂がのったニシンは普通に塩焼きが美味しい!
小骨が気になる場合は少し多めに切り込みを入れるようにしましょう。
サンマのように内蔵を出さずにそのまま焼いてもいいですが、サイズによっては白子か数の子かでおすすめの食べ方が変わるので、お腹は開いてみるのが良いです。
少量の醤油をかけて食べるのがおすすめの食べ方です!

定番の煮付け「ニシンの煮付け」

定番ですがニシンの煮付けもおすすめの調理方法です。

ニシンの煮付け

脂はあるので生鮮のニシンを手に入れたら煮付けがおすすめです!少し細かめに隠し包丁を入れることで骨を切り、味馴染みを良くすることができます。

ニシンは北欧系の料理がおすすめ

ニシンの北欧料理
北欧でメジャーな魚のニシン

北欧でメジャーな魚であるニシンには北欧系の料理がおすすめだとも言えます。
以下いくつか北欧系の料理を紹介します。

子供にも人気!ニシンのフライバーガー「ニシンサンド」

北欧系のフィッシュバーガー

スウェーデンなどではニシンサンド・ニシンバーガーが人気です。
ニシンは大衆魚であり価格も安いです。
それに日本だと、ニシンを使った料理は昔からの伝統料理みたいなものが多く、子供からするとあまり嬉しくないメニューが多かったりするんですよね。。(子供がおせちをあまり好きではないように…)ニシンの良さが分かるのは中性脂肪が気になってくる年代頃からかもしれません。

そんな時におすすめなのがニシンバーガーです。

ニシンのマリネ(マリネニシン)

北欧料理の定番ですが、ニシンのマリネがおすすめです。ディルや玉ねぎと一緒に食べます。

ニシンのマリネ
ニシンのマリネ

ニシンに限らずニシン科の魚はどれも小骨が多いため、酢を使った料理がおすすめです。
酢漬けにすることにより骨が柔らかくなるからです。
生のニシンが手に入ったら、白ワインビネガーでニシンのマリネを作ってみましょう。
白子やカズノコがある場合はそれらを入れるのもおすすめ!
脂が無い時期だと少しものたりないですが、酢漬けの料理は日持ちがします。

スウェーデン料理の定番!ヤンソンの誘惑

ヤンソンの誘惑

すみません。食べたことが無いのですが、スウェーデンには「ヤンソンの誘惑」という家庭料理があります。名前のインパクトが凄いので、食べたことが無くても聞いたことはあるという人もいるかもしれません。
ニシンが主原料というわけではなく、主な必要原料はアンチョビ、じゃがいも、玉ねぎなどといった材料で、ホワイトソースをかけて焼き上げたグラタンです。

料理名の由来は、考案者である作家のグンナー・スティグマークさんが、スウェーデンでヒットした1982年公開の無声映画「ヤンソンの誘惑」にちなんでそう呼び出したことが由来とされています。

ニシンの加工品

他にもニシンを使った興味ある加工品もあります。様々加工品が流通しています。ただ加工品のほとんどが外国産のニシンです。以下は外国のニシン加工品の有名なものになります。

シュールストレミング

テレビやYoutubeなどの影響で知っている人も多いかもしれませんが、「世界一臭い食べ物」と言われるシュールストレミングはスウェーデンの加工食品でニシンの缶詰です。

シュールストレミング
世界一臭い食べ物のシュールストレミング

保存食を作るという目的から、塩漬けのニシンが使われたことから産まれた世界的に有名な缶詰です。ニオイは凄まじいですが、味は美味しいです。納豆も似ているかもしれません。

ロールモップス

酢漬けのニシンなどでピクルスを巻いた料理です。

ロールモップス
写真はコノシロのロールモップス

保存期間も長く、酢漬けの相性が良いニシンにはぴったりの料理です。

ニシン・カズノコの目利き・選び方

ニシンは鮮度が大切なため、生ニシンを選ぶ場合は鮮度に注目してみましょう。
主なポイントは以下です。

  • 目が澄んでいてハリ・ツヤがある
  • 鱗がなるべく残っている
  • 体に潤いがあり硬い
  • 目元があまり充血していない

カズノコ(数の子)の選び方

カズノコを選ぶにもポイントがあります。主には以下ポイントです。

  • 漂白されているかどうか
  • サイズ
  • 塩数の子かどうか

カズノコが漂白されているかどうか

実はカズノコというのは、過酸化水素水で漂白されていることがあります。

なぜ漂白するのかと言ったら、カズノコというのは色が不均一で、場合によっては黒ずんでいることもあるからです。そのためカズノコの黄色を強調して美味しそうに見せる、というのが漂白の目的です。

極端に黄色いものは漂白されたカズノコ

漂白されたカズノコが全部悪いというわけではありませんが、過酸化水素水につけるなどの処理を増やすことによりどうしても本来の食感や風味が悪くなってしまいます。

色味が極端に鮮やかで黄色く明るいといったカズノコは漂白されているものが多いです。
漂白されていないカズノコはもっと深い黄色で端のほうなどは濃くなっていたりなど色ムラがあります。

漂白されていないカズノコは本来の魚卵の色

カズノコのサイズ

そこまで大きな差は無いかもしれませんが、あまりにも大きいカズノコというのはちょっと、、という意見があります。
魚というのは種類によっては大きくなりすぎると味がぼやけてしまうんですよね。

数の子が大きいということは、つまり母体が大きいということです。
例えが不適切ですが、ピチピチに若い魚の子供なのか、ヨボヨボな魚の子供なのか、、
という違いがあるようです。
「特大の数の子!」みたいな売り文句にはあまり引き付けられないほうがいいかもしれません。

塩数の子かどうか

数の子と言っても、味付けなのか塩数の子なのか、などの違いがあります。
カズノコというのはその大事な食感を守るために塩漬けで流通しているのが基本です。
そのため、食べる際には塩抜きをしないといけません。

カズノコの塩抜き
魚屋入りたての頃、手が傷だらけの時にこれやらされた…

やはりカズノコで大切な食感を味わうためには塩数の子が一番だとされています。

カズノコは厳しい安全基準をクリアしたものには認定マークが付いていることがあります。

ニシン(鰊)の名前・漢字の由来

「ニシン」という名前にはいくつかの説があります。
例えば「二親(にしん)」で、両親(父母)を意味し、長寿を祈る魚としたことや、身を背側と腹側の二つに割いて食べることにちなんで「二身(にしん)」、子持ちのニシンから「妊娠からにしん」となったという説などがあります。
また、春を告げる魚として「春告魚(はるつげうお)」と呼ばれることもあります。これは春の時期が旬となる他の魚も同様な呼び方をすることがあります。

鰊という漢字の魚辺に「柬」というのは主にニシンが東日本で獲れる魚だということや、「若い」という意味があり、小魚を意味するとされています。他にも「鯡」という漢字が用いられますが、これは前述のとおり、江戸時代に米の代わりにニシンを年貢として納めていたことから「魚にあらず」という意味で「非」が使われて「鯡」という字が使われるようになったという説があります。

カズノコ

カズノコ(数の子)については、ニシンがアイヌでは「カド」と呼ばれていて、それが伝わって「カドの子」、そして訛って「カズノコ」となったと言われています。

参考文献・参考Webサイト

以下は、いつもお世話になっている書籍・Webサイトや、今回参考にさせていただきました書籍・Webサイトになります。ありがとうございます!

【書籍】

  • 荒賀忠一,望月賢二,中坊徹次,小西和人,今井浩次,小西英人著編集(1995)『新さかな大図鑑―釣魚 カラー大全』株式会社週刊釣りサンデー.
  • 小西英人(2018-2021)『釣魚1400種図鑑』株式会社KADOKAWA.
  • 石川皓章著(2010-2019)『海の魚 大図鑑』瀬能宏監修,隔週刊つり情報編集部編,日東書院本社.
  • 『おとな図鑑(2) おいしいお魚百科』藤原昌高監修,ぴあレジャーMOOKS編集部.
  • 藤原昌高(2013)『からだにおいしい魚の便利帳』高橋書店.

【Webサイト】