スルメイカとはどんなイカ?
日本でイカと言えば「スルメイカ」と真っ先に思う人も多いのではないでしょうか?
それほどスルメイカは日本の食卓を代表するイカです。そんなスルメイカについて深堀りしていきましょう!
スルメイカの特徴
スルメイカというのは日本近海に生息する固有種であり、日本でもっとも漁獲されているイカになります。マイカとも言われます。
するめ・あたりめなどの干物が人気!
生食も美味しいですが、馴染み深いのは「するめ」「あたりめ」といった干物ではないでしょうか?
ちなみにするめとあたりめは加工度合いによって呼び分けられています。
するめというのは内蔵を取り除いて干して乾燥させたそのままの姿を「するめ」と言います。
そのスルメを食べやすいようにカットしたり裂いたものを「あたりめ」と言います。
まあ、どっちがどっちでも良いかもしれません。
ちなみに糖質・脂質がほとんど無く、タンパク質や疲労回復、肝機能を高めるタウリンも豊富に含まれており、保存性も高く、噛むことで満腹感を得られるということからダイエッターや酒飲みからは至高の食べ物として人気です。
肝臓が美味い!
スルメイカの特徴として、大きな肝があることです。この肝がとても美味しく様々なスルメイカの料理に使われます。代表的なのは塩辛です。
スルメイカの形態・体型
典型的なイカという体型をしているのがスルメイカです。
体色は赤身がかった褐色で、ヒレ(耳・エンペラ)は他の種と比べて短いのが特徴的です。
生きている時・新鮮な時は上記画像のような色ではあるのですが、イカは鮮度の関係ですぐ色が退色してしまいます。生きている時は身も透明ですが、死後どんどん白くなっていきます。
イカの特徴は触腕
イカの特徴としては、「触腕」と呼ばれる2本だけ長い触手があることです。
タコの足は8本、イカは10本、と認識している人も多いかと思いますが、その違いはこの2本の触腕の有無によります。タコは足だけ、イカは手もある、みたいなイメージです。
触腕には大きな吸盤が付いていて、普段は足の中に隠していますが、獲物を捕まえる時にバッ!と出して使います。
他には泳ぎの時の舵取りの役割をしたり、同種と喧嘩したりする時などに使うと言われています。
海水を取り込み噴出することで泳ぐ
イカというのは取り込んだ海水を漏斗からジェット噴射のように吐き出すことによって推進力を生み出して泳ぎます。この漏斗は前後左右に曲げることができ、前進後進など自由に水中を動くことができます。
外敵から身を守るための墨もこの漏斗から排出します。ちなみに呼吸はエラ呼吸です。
スルメイカのサイズ
スルメイカは胴長が20〜30センチほどで、最大で40センチほどになります。
別の科のイカとの違いに、ヒレの大きさがあります。スルメイカのヒレは胴長に対して3分の1未満と短く、形も三角形のような形をしています。
他に市場で出回っている似たイカに、ヤリイカやケンサキイカなどがいますが、これらはヒレが胴長の60%ほどはあり、大きいです。
スルメイカの生態・特徴
スルメイカは主に北日本、オホーツク海など北太平洋に分布している外洋性のイカです。
水深100〜200mほどに主に生息しており、夜行性です。光に集まる習性があることから、夜に集魚灯などで集めて漁獲されます。
釣りで狙う場合は船で沖釣りになります。
季節的に温暖な海域にも移動するため、南日本や伊豆諸島などでも見ることができますが主には北日本に生息するイカです。
スルメイカは獰猛!
可愛らしいイカですが、スルメイカはイカの中でも性格が獰猛です。
その攻撃的な性格から活発に小魚や甲殻類などの獲物を捕食します。自分と同じくらいのサイズの魚も襲ったり、近種のイカや同種で小型のものまで襲って食べます。
スルメイカの産卵期
スルメイカの産卵期は地域差がありますが、主に冬(12月頃)から春(5月頃)までの時期に出産するとされています。ヤリイカなどと同じです。
イカの精莢は危険
イカは性交方法が面白くて、メスに精莢という弾丸のようなもの触腕を使って撃ち込みます。
そこから銛のようなトゲが付いた矢みたいなものがいくつも放出されます(恐ろしい…)
そして精子が散乱されるという感じなのですが、実はこのイカの精莢というのは、もし人間が食べると口腔内に刺さって痛むらしく、自力では取ることができないということから口腔外科で摘出手術をしないといけないと言われています。
しっかりと加熱すれば大丈夫ですが、そもそも食べる部分でも無いので取り除きましょう!
アニサキスがいることで有名
自分も魚屋時代に散々スルメイカのアニサキス除去をやっていたのですが、イカというのはアニサキスがいることでも有名です。中でも代表的なのがスルメイカという印象です。
アニサキスがいるとなると嫌な気持ちになる人もいますが、海で生きる生物の宿命的な側面があります。例えばサバ缶ひとつでも3、4匹のアニサキスがいるらしく、日本人なら給食でサバを食べたことがある人なら必ず一匹は死んだアニサキスを食べていると思います笑
ただ死んでいれば食べても安全です。(アニサキスアレルギーを発症した人以外)
ちなみにスルメイカのアニサキスは魚より見つけやすい印象です。
胴体部分に、台風のような感じで渦巻いているので、開いた時にすぐ目視でわかります。もちろん鮮度や個々の状態によるので、完全なことは言えませんが、サバよりはマシな印象です。
見つけるのが難しいと思った場合は、冷凍させましょう。
スルメイカに似てるイカ
スルメイカに似てるイカとしては、主にヤリイカ、ケンサキイカがいます。
形として同じアカイカ科であるアカイカ(ムラサキイカ)が似てますが、色や大きさがかなり違ってきます。
比較画像を作成したのでイカ(以下)を参考にしてください!
あまり詳しくない人は、スルメイカとヤリイカ、ケンサキイカをよく混同してる印象です。なぜかと言うと、主にこの3種が一番多く出回っているからですね。
ただヤリイカは細長く、胴体が二等辺三角形のような感じで、ヒレが長めで菱形、脚が短いです。慣れてこればスルメイカとヤリイカ・ケンサキイカの見分け方は簡単です。
イカは色で見分けようとしても、鮮度によって大きく変わってくるので、他のポイントで見分けるのが良いかもしれません。
スルメイカの旬
スルメイカは地域により季節問わず獲れるため、一概にいつが旬という定義は少し難しいですが、主には6月〜12月、そして7〜9月の夏の時期が旬とされています。
そのためスルメイカは「夏イカ」と呼ばれ、ヤリイカは「冬イカ」などとも言われます。
ただ、イカについては魚と違って「身に脂が乗る」ということはありません。
イカの身はかなり低脂質でほとんど脂がありません。
脂が乗るとうことはありませんが遊離アミノ酸のプロリンやタウリンなどが旬の時期は著しく上昇するため、身の甘さやコクが強くなります。また、肝が一番大きいのも旬の時期になります。
ちなみに干物であるスルメの表面にある白い粉のようなものがタウリンです。
スルメイカの目利き・選び方
ご存知の方も多いと思いますが「イカは色を見て選べ」という言葉があります。
その言葉の通り、イカは鮮度がパッと見で分かりやすいと思います。
生きている時や、水揚げまもない時は身が透き通っています。
鮮度が良いものは、赤茶黒く潤っています。
鮮度が落ちてくると、どんどんと全体が白っぽくなっていきます。
流通過程で傷ができたものや色ムラがあるものなどもありますが、基本的に黒ぐろとしたものを選べばOKです!
上記写真のように黒ぐろとしていて、表面が潤っているものがおすすめです!
スルメイカの食べ方・おすすめの調理方法
何にしても美味しいと思いますが、やはりスルメイカの特徴を活かしたおすすめの食べ方を紹介したいと思います!スルメイカの食味の特徴としては、弾力ある厚めの身に、ねっとりと感じる甘みが特徴です。それとあと肝がポイントです。
刺身で食べる場合はイカそうめん!「スルメイカの刺身」
スルメイカというのは、他のイカより少し身が固めという印象です。
ねっとりとした食感で甘みがあるスルメイカですが、大きく切り分けると少し噛むのが大変だと感じる人もいるかもしれません。そんな時はイカそうめん(細切り)がいいですね!数も増えてお得感もあります。
そもそもイカそうめんというのは、スルメイカを食べやすくするためや、アニサキスを切るためを目的として誕生したとも言われる加工方法です。
名前はそうめんですが、そうめんほど細く切るのは無理なのでほどほどの細さで大丈夫です。
隠し包丁を入れるのがおすすめの方法
イカというのは、身の内面(内部層)に一番甘みがあります。
そのため、その内面をなるべく舌に触れさせたいということから、隠し包丁を入れるのがおすすめの方法です。柔らかくする目的やアニサキス駆除の目的もあります。
あまりイカを捌いたことが無い人からしたら、イカそうめんを作るだけで大変かもしれませんが、慣れてきたらなるべく細かく隠し包丁を入れてみましょう!スルメイカのねっとりとした甘さがより強調され、ワンランク上のお刺身になります。
肝が美味い!「スルメイカのわた(肝)焼き、ホイル焼き」
ただのイカ焼きでもめちゃくちゃ美味しいのは皆さんご存知だと思います。
でもそれだと普通だということで、個人的にめちゃくちゃおすすめなのがイカのワタを含めたホイル焼きです!
イカと肝を輪切りにして、ホイルに入れ、醤油・みりん・酒と、バター一欠片を入れて火にかければOKです!冷凍のイカで大丈夫です。残り汁で丼一杯のご飯がいけます。
スルメイカは肝(ワタ・ゴロ)が大きくて美味い!!
魚介類の内臓って、人から「おいしいから食べてみて!」と勧められたけど苦くておいしくなかったって…って言う人多いですよね。
ただ内臓と言っても種類があります。
簡単に言えば、、
肝臓は美味い、胆のうは苦い、胃や腸は洗ってないと臭いです。
これはどの魚介もほとんど共通だと思います。
他にも心臓や膵臓がありますが、これらは血生臭かったりしますし、卵巣や精巣は種類によっては必ずしも食べられるわけではありません。前述した通りイカの精巣はめっちゃ危険です。
でも、肝臓というのはほとんどのものが美味しく食べられます。
上記写真はイカのワタと言われ、肝臓です。フォアグラですね。
塩辛などはこの肝臓を使います。スルメイカはヤリイカなどと違い、肝臓が大きいのでこの肝臓を利用した料理などがオススメです。
墨袋とかがくっついていますが、それは取り除きます。
絶対自作してみよう!「スルメイカの塩辛」
肝が大ぶりで美味いスルメイカだからこそ、チャレンジしたいのがイカの塩辛です!意外と簡単に作れるので是非作ってみるのをおすすめします!
今まで市販の塩辛を食べたことがあるけどなんか苦手だった、、という人も、手作りのスルメイカの塩辛は全く異なる濃厚な旨みがあります!今までイカは好きだけど塩辛は苦手だったという人も自作の塩辛なら美味しくて食べられると思います。
作る時のポイントとしてはなるべく新鮮なスルメイカ(もしくは新鮮なものを冷凍したもの)を使うようにするのと、乾燥・水抜きをしっかりするというのがポイントになります。しっかり乾燥・水抜きをしないと生臭みが出てしまうので注意が必要です。
みんな大好き!「イカリング・スルメイカの唐揚げ」
もう説明不要ですよね!揚げものとして定番でもある、イカの唐揚げは絶対に外れのないスルメイカのメニューのひとつだと言えます。七味マヨつけて食べればもう酒が進む進む…
説明不要なメニューなので次いきます。
お惣菜でも人気!「スルメイカのフライ・天ぷら」
これも何を説明すれば良いのか分からないほど定番ですね!
個人的に好きなのが天ぷらです。
天ぷらって、丼物でも良いですし、蕎麦やうどんなどの麺と合わせても良いですし、万能なおかずですよね!
特にゲソ天が大好きです!食べる時に衣だけすっぽ抜けたりしますが…笑
ぷりぷりコリコリ食感がやみつき!「イカのとんび串」
とんび?と聞くと「なにそれ?」と思うかもしれません。
イカのとんびとはイカの口の部分(咬筋?)のことを言います。
イカの口はまるで鳥のくちばし(カラストンビ)のようなものが付いていることから、「とんび」「くちばし」と呼ばれます。
この黒い部分が鳥のくちばしのようになっています。ここで獲物を食べるわけですね。
イカを捌く時に腕の根本部分についている丸っこいのがイカのとんびです。
この黒いくちばしの部分は当然硬いので取り除き、食べるのは周りの筋肉の部分です。
(くちばし部分は引っ張るだけで簡単に取れます。)
イカのとんびは、獲物を食べる時などイカにとって筋力を使う部分です。そのため筋肉が発達しており、プリプリ・コリコリと美味しいんです!
当然イカ一杯に一つだけしかないため、串にするにはたくさんのとんびが必要になるかもしれません。それに大きさが物足りなかったりします。そういう場合は、イカのとんびだけ買ってもいいかもしれません。(スルメイカでは無いこともあります)
大きめのイカのとんびだけで冷凍で売られているので、興味があれば是非食べてみてください!
硬くならないからこそ!「スルメイカの煮転がし」
これもビールが進みます笑
イカも種類によって異なりますが、イカはタコのように煮物で硬くなりにくいという特徴があります。(もちろん長時間煮込みすぎると硬くなります)
そのため、大根や里芋などと一緒に煮付けた煮っころがしがおすすめです!
イカのぷりぷりとした食感と、里芋のねっとりしたやわからさ、少し濃い目に甘辛くした煮汁の相性がバツグンです!
考えた人は天才!「スルメイカの烏賊飯(いかめし)」
イカ飯は北海道渡鳥地方の郷土料理ですが、今では全国的に広まっているスルメイカの食べ方でもあります。
分かる人はわかるかもしれませんが、イカって胴体とゲソを別々の料理で食べたいなって思うことがあるんですよね。例えば揚げ物であればゲソで、胴体は焼いたり、煮付けたりして…みたいに。
イカ1杯まるまる全部同じ調理方法というのが味気無い…と思った場合はイカ飯にチャレンジ!
イカ飯は胴体部分しか使わないので、ゲソは他の調理方法で楽しみましょう!もちろんゲソを切って中に入れても構いません。
もち米を使うことが多いですが、普通のお米でもOKです!
イカは開かないので、中の軟骨や内臓を丁寧に取って洗い、お米と調味料(酒・醤油・みりん)と混ぜてイカに詰めます。端の部分を爪楊枝で止めて、破裂防止のために胴体に爪楊枝かフォークで穴をいくつか開けておきます。
あとは、酒・みりん・醤油・砂糖などの調味料をひたひたになるくらい入れて、煮付ければ完成です!
海なし県で誕生した食べ方!「塩丸いか」
正直おすすめの食べ方というものではありません。。
長野や山梨などの海なし県でイカを食べるために誕生した保存食です。
食べる時は塩を抜かないといけません。
塩抜きは面倒ですが、塩を抜いた後はカットすれば食べられます。よくある食べ方としては、きゅうりやマヨネーズなどと和えたものなどになります。そのままのスルメイカには無い塩気と弾力があり美味しいです。
スルメイカの漁獲・養殖
近年様々な魚介が減っていたりしますが、スルメイカもそのひとつです。
1968年では、56万トン捕れていたスルメイカが、2022年では3.7万トンと約15分の1にも減ってしまっています。
(参考:スルメイカが獲れない理由。獲り過ぎ?温暖化?クロマグロ? _ 魚食普及推進センター(一般社団法人 大日本水産会).html)
当時頃の人に聞くと、本当に海の資源が豊富だったんだなあ、と思わされたりします。
スルメイカが減った理由としては、やはり温暖化による生息域の変化、乱獲(中国漁船などがニュースになることも)、漁師の減少、他生物による捕食などがあるとされています。
温暖化については、北日本を生息域としている魚介が特に影響を受けている印象です。
逆に南のほうのお魚は本州付近で増えてきていたりしますが、北のほうを生息域にしている魚介は
もしかしたらどんどんロシアのほうに移っているのかもしれません。
真相は不明です。
イカの養殖業の希望
養殖については、様々な魚介がされていますが、いまだ研究中・挑戦中の段階の魚介が多くいます。イカもその段階です。
イカの養殖は不可能だと言われてきた
約60年も研究されてきたイカの養殖ですが、うまくいかず、イカの養殖は不可能だと言われてきました。
というのもイカは人間からしたら後ろ向きに動いているようなもので、海とは違う狭い養殖環境では壁などに激突しやすく、それが原因で死んでしまったり、水温の変化にとても敏感だったり、エサもとにかく活きエサを好みということや、さらには共食いまでするという性質があるため、養殖は難しいとされてきました。
アオリイカの養殖が現実化してきている
スルメイカではありませんが、アオリイカの養殖が現実化してきているようです。
(参考:イカの養殖に世界初成功 「温泉の仕組み」活用 » Japan 2 Earth)
まさかの釣り人大人気で高級なアオリイカの養殖が実現化しようとしているらしいです!
ただ商業化へのコストの壁がいまだに高いため、難しいそうですが応援したいですね。