ヤリイカとはどんなイカ!?
日本で食卓を代表するイカと言えば、スルメイカ、ケンサキイカとヤリイカです。
ただ、これらのイカの違いがあまりよく分かっていないという人も多いのではないでしょうか?
そんなヤリイカというイカについて深堀りしていきましょう!
ヤリイカの形態・体型
ヤリイカの見た目の特徴としては、透き通った半透明の体に細長く尖った胴体が特徴的です。
透明度・色味というのは興奮状態・鮮度によって変わります。
変温動物には「色素胞」という特殊な体色変化をさせる細胞があります。色を変えて擬態したり、外敵を威嚇したり、仲間とのコミュニケーションを行います。
どのイカも生きている平常時は半透明の体をしていますが、ヤリイカやケンサキイカなどは透明度が高いです。
そのため、お刺身として見た目が美しい「イカの活造り」などにされるイカは主にヤリイカ・ケンサキイカです。
他のイカと見分ける時の特徴が、この体型です。ヒレは胴長60%ほどの範囲にあり菱形です。
ヤリイカのサイズ:成長度合いで味わいが変わるイカ
ヤリイカのサイズとして、平均的な流通サイズは20〜35cmほどになります。メスのほうが小型です。大きいものは40cm以上になります。
小ヤリ、大ヤリと使い分けられる
ヤリイカのサイズは前述の通りですが、サイズによって味わい方が変わるということから、小さめのサイズや大きく成熟したサイズなど、それぞれ商業目的に合わせて漁獲されます。
例えば小型のものはお寿司屋さんでゲソまで含めた姿用に加工されて流通しますし、丸茹で用としても多く流通します。
成長サイズで味わい方が変わるというのが、ほんと楽しいですよね。
冬の子持ちヤリイカが美味しい!
冬の産卵期の子持ちは煮付けにすると格段の美味しさで人気があります。是非見つけたら、煮付けなどにしてみてください。オスとメスはサイズが違く、メスのほうが小さいです。
ちなみにヤリイカにししゃもの卵などを詰めた子持ちやりいかというお惣菜も人気です。
ただヤリイカはスルメイカのような大きな肝臓は無いので、肝料理は楽しむことができません。
しかしスルメイカより柔らかく、上品な甘みが感じられますし、スルメイカより数が少ないので高値で取引されるイカです。
ヤリイカの生態
どれも同じように見えるイカでも、種類が違えば生態も異なるというのが面白いですよね。
ヤリイカは主に寒い海域を好むイカです。
日本では北日本が主な生息域になります。他には北太平洋や、西部太平洋の北側などに分布しているイカです。
ヤリイカの産卵期
ヤリイカは冬から春にかけての時期が産卵期とされています。
産卵期になると日本沿岸に訪れて産卵を行います。
そのためこの産卵期を狙って漁獲を試みます。
ちなみに産卵後は死んでしまいます。多くのイカは寿命が1年ほどと短命です。
ヤリイカと似ているイカ
日本で流通している主要なイカと言えば、スルメイカ、ヤリイカ、ケンサキイカの3種になります。(釣り人的にはアオリイカ)
全国的にも漁獲量が圧倒的に多いのはスルメイカです。
スルメイカとヤリイカの違いについては、分かりやすいと思っています。
ヒレの形状、体型・体色、腕の太さ・長さ、サイズなど、様々な違いがあるからです。
ただ、ケンサキイカとの見分け方についてはなかなか難しいです。
流通しているものであれば、体色変化などもありますし見分けやすいですが、活けのものなどはかなり見分けにくい印象です。イカ(以下)にヤリイカとケンサキイカの見分け方について説明します。
ヤリイカとケンサキイカの見分け方・違い
ヤリイカとケンサキイカの違いとしては、主に胴体の形状と腕・触腕の形状によって見分けます。
ヤリイカは、胴体が細長くて、名前通り槍のような形状をしています。
個人的な見分け方のポイントとしては、ヒレの位置と言いますか形状がポイントで、ヤリイカはヒレから先端までが長く見えるのが特徴です。
それと胴体がヤリイカは細長く二等辺三角形のような体型なのに対し、ケンサキイカは胴体が短めで太く、少し丸みがある形状をしています。
もし胴体の特徴でわかりにくければ触腕を見てみましょう。
(触腕というのは、10本あるイカの腕のなかで2本だけ長い腕のことを言います。)
ヤリイカは触腕が短いため「テナシ(手無し)イカ」とも呼ばれる
ヤリイカは触腕が短く、長くありません。しかし、ケンサキイカは触腕が太く長いです。
長さで分かりにくかったら吸盤を見る
イカは死後触腕がでろーんと伸びてしまうので、いまいち長さでわかりにくいということもあります。その場合は触腕先端部分の吸盤を見てみましょう。
ケンサキイカの触腕の先端は目視でわかる大きめの吸盤が付いています。そのため先端は少し膨らみがあります。ヤリイカの触腕は吸盤が細かくて小さいです。そのため先端の膨らみもありません。
ただ、生きている時や釣り上げられたばかりのヤリイカとケンサキイカの見分け方は本当に難しいです。
イカは触腕を腕の中にぎゅっとしまっていたりしますし、触腕は捕食や喧嘩の時に使うのでちぎれてしまっていたりします。そういった活け物の場合は触腕での見分けが難しいです…。
泳ぐ時に舵の役割として出したりもします。生け簀や水族館などに言ったら注目して見てみましょう。
他のイカについてもまとめた画像があるので良ければ参考にしてみてください。
日本の主要なイカ
慣れてこれば見分けが簡単になりますが、それでもヤリイカとケンサキイカは他の種と比べても見分けが難しいですね。画像にすると分かりやすいかもしれませんが、実物を見ると分かりにくいことがあります。
ちなみに余談ですが、イカというのは腕がある方が頭側なので、図鑑などではイカの写真掲載は腕側が上にされて掲載されています。
(参考:新編 世界イカ類図鑑 ウェブ版 – 全国いか加工業協同組合)
しかし、近年の「イカ」という生物像的に、イカは「胴体という帽子を被っているように見える生物」みたいにさまざまなところで描かれることが多く、それが浸透しているため、当サイトでもイカはこの向きで掲載していくことにしています。
ヤリイカの旬
ヤリイカの旬は、冬から春の時期とされています。
これはヤリイカが一番成熟してくる時期であり、子持ちも獲れる時期です。
ヤリイカは一年サイクルで生きているので、ちょうど春くらいに一番サイズが大きくなります。
ただ夏頃の小さいヤリイカも漁獲されたりします。
スルメイカは夏が旬とされていますが、回遊の関係からスルメイカは冬はあまり捕れなくなるイカです。それに対してヤリイカは、冬の時期に産卵のために日本沿岸を訪れるため、漁獲しやすいということで、スルメイカは「夏イカ」、ヤリイカは「冬イカ」と呼ばれます。
魚と違って、イカは身に脂がのるとかはありません。
イカはかなりの低脂質で身に脂はほとんどありません。
ただ、旬の時期にまで遊離アミノ酸であるプロリンやタウリンが高まることがわかっています。
プロリンは甘味で、タウリンはコクに結びついています。
ヤリイカの場合は、成長度合いで味わい方が変わるから、一概にいつの時期が一番美味しいとは言えないかも
例えば刺身で食べるならあまり大きくなりすぎたものよりも、胴長20cmほどのものが向いていると言われています。(参考:ヤリイカ|東京都中央卸売市場)
夏の小ぶりなヤリイカも普通に美味しいです。
魚であれば旬の時期は脂が乗って「うまい!」となりますが、イカというのはそういう概念がありません。
基本的にそこまで大きな違いは無く、いつ食べても美味しいと思います。
ヤリイカの食べ方・おすすめの調理方法
ヤリイカの食味の特徴としては、柔らかく上品な甘みがあるところです。
加熱してもあまり硬くならず、甘みが増すことから加熱料理にもおすすめのイカです。
スルメイカよりも身に厚みがないため、お刺身としても食べやすいです。そのため食味の評価としてはスルメイカより高く評価されているイカでもあります。
また活きのものは身が透き通っていて綺麗なため、イカの活け造りなどが人気です!
新鮮なものはコリコリとした歯ごたえ!「ヤリイカの刺身・活け造り」
新鮮な刺身で食べられるヤリイカを手に入れたら是非ともチャレンジしたいのがお刺身です。
アニサキスの危険性もあるので、写真のように隠し包丁を入れましょう。
冷凍のヤリイカのお刺身でも美味しいですが、その場合は冷凍方法について調べて、なるべく新鮮な状態で素早く冷凍されたものを選びたいです。
活きの場合も、なるべくストレスが増えていない状態のものを食べたいですね。
メスの子持ちの煮付けが絶品!「子持ちヤリイカの姿煮」
冬の産卵期は、子持ちが人気です!子持ちのヤリイカを入手して姿煮にしましょう!
煮付けると縮むため、まるでお腹の中にパンパンに卵が入っているかのような見た目になります。
かぶりついた時の中の卵がほくほくして絶品です!
パスタ料理が美味しい!「ヤリイカのペスカトーレ」
ヤリイカと言えばパスタとも言えるほどパスタ料理との相性がバツグンです!
パスタ料理と相性が良いというか、オリーブオイルやニンニクとの相性が良い印象です。
ペスカトーレとは「漁師風」という意味です。
アサリやエビ、そしてイカなどをトマトソースと合わせて作ります。
ヤリイカはスルメイカよりも小ぶりで柔らかいため、パスタなどの料理に向いていると言えます。
スルメイカだと少し大きいため、切らないとフォークだとちょっと食べにくいですよね。
シンプルなバター炒めが一番美味いかも「ヤリイカのバター炒め」
シンプルイズベストです。
なんだかんだイカって、シンプルにバターで炒めて食べるのが一番美味しいと思ったりしますよね。アオリイカとかならやっぱ刺身となりますが(もったいないし)、ヤリイカやスルメイカならシンプルなバター炒めが最高に美味しいです。
小ぶりなヤリイカはボイル!「ヤリイカの塩茹で」
スーパーとかでもよく見かけますよね。
小ぶりなヤリイカは塩茹でが伝統的な食べ方です!からし酢味噌などのお好みのタレでいただきましょう!
実は国内ではあまり獲れないイカ
ヤリイカは有名で人気のあるイカですが、国内ではあまり捕れないイカでもあります。
「数年に一度水揚げがあるくらい、、」という地域も多いです。
冷凍させずに生食用が流通するところは限られます。そのため、活きた状態で流通させようと工夫をしているところも多々あります。
水揚げが少ないのになんでこんなに流通しているのかと言うと、ヤリイカは輸入が多いからです。
意外かもしれませんが、東南アジアなどで漁獲・冷凍されて日本にやってきます。