ホッコクアカエビ(アマエビ)とはどんなエビ?
ホッコクアカエビ(アマエビ)とは、主に北海道・北陸・東北・北太平洋など寒い地域の深い海に生息しているエビです。
アマエビ(甘エビ)と呼ばれるエビ
標準和名はホッコクアカエビですが、一般的には「アマエビ(甘エビ)」、「アカエビ(赤エビ)」と呼ばれて流通します。甘みが特徴的ということから「アマエビ(甘エビ)」と呼ばれることが多く、お刺身や寿司ネタとして人気があります。(当ページでは一番馴染み深い呼び名である「アマエビ」で話していきます)
「唐辛子に似ている」、「たくさん獲れる」に由来した呼び名も
他にも、全国的な甘エビブームを作り上げた新潟県では、昔の唐辛子の呼び名の「南蛮」になぞらえて、「ナンバンエビ(南蛮海老)、ナンバン」と呼ばれます。
その他にも「トウガラシ、トンガラシ」とも呼ばれたり、たくさん獲れるため重さの単位である「トン(t)」から「トンエビ」とも呼ばれます。
輸入冷凍ものが人気
甘エビは国産のもの以外にも、ロシアなどから冷凍されたものも多く輸入されてきており、日本産のものよりも安価で幅広く利用されています。
お刺身などで食べる場合の味は、やはり国産の冷凍していない生ものが一番と言われますが、近年は急速冷凍技術が優れているため、そこまで味が落ちることもなく美味しいです。
アマエビの見た目の特徴
アマエビのサイズは約10〜13センチほどで、他のエビよりも全体的にほっそりとした体型をしています。
額角は長めで甲長の1.5倍ほどあり、上縁には12〜16の鋸歯(うち3〜4歯が甲上)、下縁には6〜9歯あります。唐揚げで食べた時に、口内・歯茎に突き刺さりやすいのがこの額角部分です。
腹節の第3節背部には少し突起があり盛り上がっています。
目立った斑紋が無く、赤い体が特徴的
アマエビの見た目の特徴としてはやはりその赤さです。
エビやカニの殻にはアスタキサンチンが含まれているため、どのエビも赤いわけですが、加熱する前には赤くないものもいますよね?
そういったエビはアスタキサンチンが殻の中のタンパク質(クラスタシアニン)と結合しているため赤くありませんが、加熱することでタンパク質と分離され、空気中の酸素により酸化することで赤くなります。
しかしアマエビの場合は、生時の時から殻のアスタキサンチンが酸素に触れて酸化し赤くなっています。
鮮度が良いものほど赤みが濃く、時間が経つと少し薄くなっていきます。ただ、食味的に言えば少し色が落ちてきたくらいのほうが甘みもうま味もあります。
メスの子持ちは卵を抱えている(抱卵)ことがあるのも特徴です。
大きいものはほとんどメス
後述しますがアマエビは生まれた時はすべてオスで、6歳頃、体長6〜8cmほどの時期にメスに性転換を行います。
そのため体長が10cm以上となるものはほとんどメスだと言えます。
ちなみに卵が青っぽい色をしているのは、エビやカニの血には、赤いヘモグロビンが含まれていなくて、ヘモシアニンという成分が主なため青く見えるよ!
アマエビの生態
アマエビは、島根から北海道までの日本海側、オホーツク海、ベーリング海、アラスカ海、カナダ西部など北太平洋に分布しています。食性は肉食で、小さな貝類、甲殻類、多毛類などをエサとしています。
生息水深は深めで、100~700m(平均的には300〜500m)の深海の砂泥底に生息し、水温は0~8℃の低水温を好む寒海性、深海性のエビです。
アマエビの産卵期
アマエビの産卵期は地域差がありますが、主に春頃で、南の暖かい地域のほうが早く産卵期が訪れます。
メスは約10ヶ月ほどの期間、卵を腹肢で抱える抱卵を行い、一度に約2000~3000個の卵を産卵します。生まれた幼生はプランクトンとして海中を浮遊し成長を続けます。
性転換を行うエビ
ホッコクアカエビ(アマエビ)は性転換を行うエビです。
性転換を行うエビは他にも、トヤマエビ・ボタンエビ、ホッコクエビ(ホッコクシマエビ)などがいます。
主には2〜4歳ほどでオスとして成熟し、6歳の春頃にメスへと性転換を行います。
このようにオスとして成熟してからメスに性転換することを雄性先熟と言います。お魚で言えばクマノミとかが有名ですよね。
エビの中では長寿
寿命が1年ほどのエビも多いなかで、アマエビは長寿なほうで11年以上生きると言われています。
メスへの性転換が6歳ほどであり、その後死ぬまでに3、4回ほどの産卵を行うとされています。
さらには生息域で産卵の間隔が異なり、毎年産卵するアマエビと、隔年で産卵するアマエビがいます。オホーツク海、日本海の大和堆あたりの個体群は1年おき、太平洋側の個体群は毎年産卵すると言われています。(参考:日本の旬・魚のお話|甘海老(あまえび))
同じ雄性先熟をするボタンエビなどと違って、アマエビは長寿で産卵のペースが早いから数が多くて市場供給量が安定しているのかもね。
アマエビの旬
ホッコクアカエビ(アマエビ)の旬については、一概にいつが旬とは言えないです。なぜなら産地・個体群によって産卵活動時期がバラバラなためです。
北海道の日本海側のアマエビの旬は5〜7月の夏、新潟のアマエビの旬は11〜2月の冬とされています。
(参考:日本海の甘えび|北海道|全国のプライドフィッシュ、南蛮エビ|新潟県|全国のプライドフィッシュ)
ただ一般的に多くが獲れる北寄りの地域の場合、海水温が下がる冬の時期が美味しく最も実入りが良いとされています。
美味しいアマエビの選び方
美味しいアマエビを選ぶ場合、旬の時期を考えるよりも獲り方や冷凍かどうか、オスかメスかのほうを考えるほうが大切だと言えます。
獲り方や冷凍かどうか、オスかメスかのほうが大切
アマエビの獲り方ば、主に底引き(桁引き)漁と、エビ篭漁の2つの漁法があります。
底引き網漁では、水揚げ時にアマエビは死んでしまい身にダメージがあったりしますが、カゴ漁の場合は活きたまま船の生け簀に移されたりするため、鮮度がとても良いという特徴があります。
冷凍のものはどうしても解凍工程で味が落ちてしまうため、できれば冷凍されていないものが望ましいです。
性転換前のオスが最高に美味い?
アマエビは6歳頃に性転換をしますが、実は身の美味しさの観点から言うと性転換前のオスが一番美味しいと言われています。
メスになると、やっぱり卵に栄養や体力がもっていかれちゃうからなのかもね
甘エビはなぜ甘い?
ホッコクアカエビ(アマエビ)の食味の特徴と言えばやはりその強い甘みです。
お刺身やお寿司で食べたことがある人も多いかと思いますが、ねっとりと舌に絡みつく甘さが特徴的ですよね。
ではなぜ甘いのかと言えば、甘みの呈味成分があるグリシン、アラニン、プロリンなどをたくさん含有しているからです。
ただ、他のエビもこれらアミノ酸は多く含まれているわけですが、アマエビは深海性で水分量が多い小型のエビであるため、タンパク質が分解されて遊離アミノ酸が増えるまでが早いと考えられます。(足が速い)
捕れたてすぐのアマエビを食べてもあまり甘くないと言われており、みんながお店や食卓で食べる時は、ほどよい時間が経過していて遊離アミノ酸が増えているため、ねっとりと舌にまとわりつく甘さがあると言えます。
アマエビの食べ方・おすすめの調理方法
やっぱり生食がいちばん!
アマエビのおすすめの食べ方と言えばやはりねっとりとして強い甘みが特徴的ということで、生食が一番おすすめです!
安価で生食ができるエビということもあり、冷凍しておいて食べたい時に解凍して食べることもできるため、とても簡単にお刺身が楽しめるエビでもあります。飲食店では注文が入ってから凍っているものを融かしてお刺身として提供しているくらいです。
他のエビではなかなかこうはいきません。
アマエビは小ぶりなため、豪快にいくつも乗せて食べるお寿司や丼物なんかが人気の食べ方ですよね!
ただやはり足が速い(鮮度落ちが早い)ので、冷凍ものでも解凍後はなるべく早く食べたほうが良いです。
むくのが面倒な場合などは、お刺身用としてパック詰めされたようなものも販売されています。
唐揚げなどの加熱料理もおすすめ!
お刺身やお寿司などの生食がおすすめですが、当然加熱調理もおすすめです!
殻がやわらかいため、殻ごと食べることができ、加熱することで香ばしくなります。
頭には濃厚な旨味があるえび味噌があるため、そのえび味噌を活かして味噌汁にするのもおすすめですね!