ハマグリとはどんな貝?
ハマグリとは、砂浜・干潟に生息する、香りよく上品な出汁がでることで人気の二枚貝です。
アサリより大きく、最大で殻長は8センチほど、殻高は6センチほどになります。
(流通する多くのものはもっと小ぶりです)
貝殻の模様や色味は多種多様ですが、アサリほどまで多種多様という印象はありません。
多くのハマグリは乳白色(クリーム色)と栗色が合わさったような色や模様か、どちらか一方が強い色をしています。
茶色いものは本当に栗っぽく見えるため「浜辺にある栗」という意味から「浜栗」と名付けられた説があります。他には、昔は石ころのことをクリと呼んでいたため、「浜にある石ころ」「浜を歩くと石があった」という意味からハマグリと名付けられたという説があります。
雅で高貴な風格のある貝
ハマグリは、香り良くて上品なきれいな出汁がでる高級な貝です。
さらには貝殻もすべすべしていて触り心地が良く、模様も美しいということからどこか高貴で気品のある貝だと言えます。
その貝殻の美しさから、昔から多くの工芸品にもされている貝です。
日本の伝統行事に欠かせない貝
ハマグリは日本の伝統行事に欠かせない貝だと言えます。
有名なのは、ひな祭りの「貝合わせ・貝覆い」という遊びや、結婚式・お正月・赤ちゃんが産まれて100日を記念する100日祝い(百日祝い・ももか祝い)などの時に食べるハマグリのお吸い物です。
ハマグリは、同じ個体の貝殻同士でないとぴったり合わないことから、「夫婦和合」の象徴として扱われる
二枚貝というのは、二枚の貝殻が対で合わさっているわけですが、多くの貝というのはサイズが同じであれば別の個体の貝殻でもぴったり合わさることが多いです。
しかしハマグリの場合は、同じ個体の2枚同士で無いとぴったりと合わないことから、「夫婦和合」の象徴として扱われます。
「他の人ではダメ、この二人だからこそ合う」という意味ですね。
そこから派生した遊びとして平安時代に生まれた「貝合わせ・貝覆い」という遊びがあります。
これはトランプでやる神経衰弱と同じような遊びで、貝殻の内側にペアの絵を描き、対となる貝を当てるという遊びです。
同じ個体の貝殻じゃないとぴったり合わないから夫婦和合の意味があるってなんか素敵ですね。
お食い初めにはハマグリのお吸い物が欠かせない
赤ちゃんが生まれて100日を祝う「お食い初め」という儀式ではハマグリのお吸い物が欠かせません。
具は必ずしもハマグリである必要はありませんが、ハマグリが夫婦和合の意味を持つことから、「良縁に恵まれますように」と願いを込めてハマグリを使うという理由があります。
お吸い物であるのには、「吸う力が強くなりまるまで丈夫に育つように」「母乳を力強く吸えるように」と願う意味があります。
(参考:お食い初めの定番「ハマグリのお吸い物」レシピとその他の汁物や基礎知識をご紹介します)
ハマグリと似ている貝
ハマグリと似ていると言われる貝についていくつか見てみましょう。
似ていると言っても、チョウセンハマグリとシナハマグリに関しては、ほぼ同じようなハマグリとして、ハマグリ属の総称としてどれも「ハマグリ」と呼称して良いことになっています。
そのため、当種に関しては区別するために「本ハマグリ」と言われることもあります。
ハマグリとチョウセンハマグリの違い
ハマグリとチョウセンハマグリの違いとしては、主には生息場所とサイズです。
ハマグリは内湾の浅い場所に多いのに対し、チョウセンハマグリは少し外洋方面の深場に生息しています。ちなみにチョウセンハマグリは「朝鮮蛤」と漢字で書きますが「汀線蛤」とも書きます。
つまり昔から日本にいる在来種の貝です。ネーミングのせいでまるで外国由来の貝のように思ってしまいますよね。
サイズは、ハマグリは最大で8.5センチほどですが、チョウセンハマグリは最大で15センチほどになります。
食味に関しては、本ハマグリのほうが評価が高いと言われることが多いです。
あまり大きな違いは無いような気がしますが、チョウセンハマグリは少し硬めでスジっぽいと評価されることがあります。ただ、チョウセンハマグリのほうが大きくなるので、チョウセンハマグリのほうが高値になることもあります。
ハマグリとチョウセンハマグリの見分け方
サイズが同じくらいだと見分け方はちょっと難しいなあと思うのですが、いくつかポイントがあります。
ハマグリの場合
ハマグリは比較的に丸っぽく、放射肋(縦方向に放射状に広がるスジ)が目立ちます。
色も白っぽいクリーム色が多く、模様もあったりします。
チョウセンハマグリの場合
チョウセンハマグリは、ハマグリと比較して三角形に近い形をしており、横に細長い感じがあります。
ハマグリよりも成長肋(成長に伴い横方向に残るスジ)がはっきりとしている傾向があります。
色もハマグリよりも濃いめで、白色というよりも茶色がかっていることが多いです。
ハマグリとホンビノス貝の違い
個人的にはこの両者が似ていると思ったことはありませんが、、よく比較されているようなので簡単に説明します。
この2種の見分け方は遠目からでもわかりやすいと思います。
まずハマグリというのはすべすべしていて、粘液を出すことから表面に光沢があります。
一方ホンビノス貝は成長線がかなりくっきりと残り、成長線の凹凸も大きく光沢がありません。
ハマグリは栗色や少し緑っぽい色をしていたり、模様があったりしますが、ホンビノスガイにそれらの特徴は無く、色は白・灰色で成長線が黒く目立つといった感じです。
値段もかなりの差があり、ホンビノスガイはお安いです。
ハマグリの生態
ハマグリは、その名の通り浜辺や干潟などの浅い海域の砂泥底に生息しています。
アサリよりも水質に敏感で、数も少ないです。そのため潮干狩りの場所では、アサリは獲ってもOKだけどハマグリはダメという場所も多くあります。
以下画像のように、砂から水管を出して、海中のプランクトンや有機物を取り込んで栄養を取っています。
砂泥地に住む貝
ハマグリの産卵期
ハマグリの産卵期は地域差がありますが、平均的には初夏から夏(6月〜9月頃)にかけての時期です。
水温が上昇してきて、適した条件になった時にハマグリは産卵を行います。
そのため暖かい南日本側では産卵期が早く(5月頃から)、寒い北日本側では産卵期が遅く(7月頃から)なります。
ハマグリの旬
ハマグリの旬は産卵期と同じく地域差がありますが、平均的には春から初夏までの時期が旬とされます。
つまり産卵期前です。
前述した通り、産卵期は南日本だと早く、北日本だと遅くなります。それと同じように旬の時期もズレます。産卵期前が旬なのは、産卵に備えて栄養を蓄えるからです。産卵を終えると身は痩せてしまうとされています。
ただ、貝というのは個体数を維持するために、産卵期はどこも漁獲が禁止されています。
特にハマグリは数が少なく貴重なので、より厳格に資源管理がされているので、旬の時期から大きく外れた活けものを食べるというのはほとんど無いように思います。
ハマグリの食べ方・おすすめの料理
ハマグリには特有の香りと、上品な貝出汁がでるという特徴があります。
そのため薄味のお吸い物など、繊細な味付けの料理にも適している貝です。
ハマグリは基本生食はしない
一部の産地を除きますが、ハマグリは基本生では食べません。
ハマグリに限らずアサリなども同じです。
理由としては生だとそもそもあまり美味しく無いというのと、貝毒による食中毒が心配だからです。
二枚貝というのは場所を決めたらあまり動かず同じ場所でプランクトンなどを食べ続けるのですが、少量でも毒素を持った植物性プランクトンを食べ続けると、それが体内に蓄積します。
そんな貝を人が食べると中毒症状を引き起こす可能性があります。
何よりそのような貝は生だと少し刺激臭がします。これは産地によります。
さらにはハマグリはビタミンB1を分解するアノイリナーゼ酵素というものがあります。
人はビタミンB1を体内蓄積することができないので、食べ物から頻繁に摂取するしかないわけですが、それが分解されてしまうわけです。
加熱することでこのアノイリナーゼ酵素は無くなります。(まあ加熱すると食品のビタミンB1も無くなるんですけどね。。)
ド定番!「ハマグリの酒蒸し・バター蒸し」
アサリと同じです笑
シンプルイズベストとはこのことで、なんだかんだアサリやハマグリの一番おいしい食べ方というのは酒蒸しやバター蒸しだと思っています!
浜焼きももちろん美味しいのですが、火加減をミスすると固くなってしまったり、貝の出汁がこぼれてしまったりします。
しかし酒蒸しにすれば貝が固くなることは無く、身はふんわりプリプリと柔らかく、貝から出る出汁も楽しめます!
個人的にはこれ以上は無い食べ方という気持ちがあります。ですがハマグリはアサリと違ってお高いので、もう少し手間をかけた料理を作りたいという気持ちもありますよね笑
ハマグリの上品な香りと出汁を堪能!「ハマグリのすまし汁・お吸い物」
ハマグリの香りとうま味を装飾無しに味わうというのであればこの食べ方がベストだと思います。
出汁はハマグリからでる出汁のみで、お好みで少量の塩や醤油で味付けをします。
とっても美味しいですし、お祝い毎の時にもおすすめの料理です。