バカガイ(アオヤギ)とはどんな貝?
バカガイ(アオヤギ)とは、ミナトガイ、シオフキガイとも言われる黄緑・青緑色をした二枚貝です。アサリやハマグリと並び潮干狩りなど食用としても馴染み深い貝です。
青柳(あおやぎ)と呼ばれる
標準和名はバカガイですが、流通や飲食店などでは「アオヤギ」と言われることのほうが多いです。これは江戸時代からの名残です。
もしかしたら販売する商品に「バカ(馬鹿)」と名付けるのが良くないという考えもあるのかもしれません。
可食部のむき身をアオヤギと呼ぶ
アオヤギというのは、バカガイを剥いて、貝殻を除いたむき身の部分を指すことが多いです。
小柱のみを集めてかき揚げなどにされることもあります。小柱は左右で大きさが異なり、大きい方は大星、小さい方は小星と言います。
斧足(足)のみの部分は、舌切と呼ばれることもあります。
なぜ青柳(あおやぎ)と呼ばれるのか?
昔の江戸周辺がバカガイの一大産地であり、その場所が「上総国市原郡青柳(現在の千葉県市原市青柳)」であったため、その地名をとって青柳とされたという説や、足の部分が垂れた柳の葉のように見えることから青柳と呼ばれるようになったという説があります。
どちらにしても江戸前寿司では「アオヤギ」と呼ばれていたことから、その名残でアオヤギと呼ばれることが多いです。
江戸前寿司で人気の寿司ネタだよね。
今では東京湾ではほとんど見られませんが、昨今は各地で貝類の資源管理が徹底されてきているため、復活してきてくれることを期待したいですね。
なぜバカガイというのか?
バカガイと聞くとパンチのある名前だなと思う人もいるのではないでしょうか?
なぜバカガイと呼ばれるようになったのかにはいくつか説があります。
これらはすべてバカガイの生態の特徴からきているので注目して見てみると面白いですよ!
足を出している姿が、人が舌を出しているように見えて「バカっぽい」という説
貝殻が薄く割れやすいことから「破家貝」と言われた説
見た目はハマグリのように見えるバカガイですが、貝殻の強度はハマグリとは全く異なります。
ハマグリの貝殻はしっかりとしていて工芸品にもされますが、バカガイの貝殻は薄く割れやすいです。そのため「破家貝」と呼ばれたという説があります。
バカみたいにたくさん穫れるからという説
バカガイは、桁網漁などで一箇所でたくさん獲ることができます。そのためバカみたいに穫れることからバカガイと呼ばれるようになったという説があります。
常に口を開けていて鳥に簡単に食べられてしまうため、という説
貝と言えばどの貝も水から出れば身を守るためにピシッと殻を閉じるものですが、バカガイはなぜかすぐ閉じずに開きっぱなしだったりするため、鳥に簡単に食べられてしまうことから、その光景がバカっぽいということからバカガイと呼ばれるようになったという説があります。
ハマグリと間違えて喜んでいたらバカガイだった…という人がバカっぽいから、という説
なんとも悲しい話しいですが、慣れていない人からすると間違える人もいるほど結構似ています。
触ればザラつきでわかりやすいですが、遠目から見るとよく分からないこともあります。
ハマグリのほうが食味がよく貴重とされたため、「ハマグリだ!」と喜んでいたらバカガイだったという話がバカっぽいということから、バカガイと呼ばれるようになったという説があります。
足が速く頻繁に「場を替える貝」だから、という説
バカガイは常に足をでろんと出していますが、他の貝よりも移動スピードが速いと言われています。
そのため「さっきいた場所にいない」とすぐ「場替え」をすることからバカガイとなったという説があります。
どの説もバカガイの特徴に関係していて面白いね!
(参考:バカガイ – Wikipedia)
バカガイ(アオヤギ)の生態
バカガイは、日本各地から東アジア、東南アジア南部の西部太平洋の浅海に分布しています。
内湾や干潟、砂浜などの砂泥地に多く生息しています。
砂泥に埋まって生活しているため、満潮時に水中にのプランクトンや微小な有機物を濾し取って栄養を取っています。
バカガイの産卵期
バカガイの産卵期は地域差がありますが。主には初夏から初秋(6月から9月頃)だとされています。二枚貝の産卵はメスが水中に卵を吹き出し、その卵めがけてオスが精子をかけることで受精卵となります。その後孵化し、幼生時期を過ごしてから稚貝となり、数ヶ月かけて成貝と成長していきます。
(参考:貝は、どうやって赤ちゃんを産むの:学研)
バカガイ(アオヤギ)の旬
バカガイの旬は、主に春先から春頃(2〜4月頃)にかけてとされています。
地域差がありますが、初夏になると産卵期となるため、産卵期前の栄養を蓄えている時期がバカガイの旬とされます。
産卵期に入ると産卵により体力や身が落ちてしまいますし、そもそも貝は個体数を維持するために禁漁期間が設けられているため、産卵期には漁獲することができません。
バカガイ(アオヤギ)のおすすめの食べ方・調理方法
バカガイ(アオヤギ)というとやはりアカガイなどと同じく江戸前寿司のイメージが強いです。
バカガイの食味としては、ほどよい甘味があり、少し特有の磯の苦味・渋みなどのクセがあるのが特徴です。このクセが少し好き嫌いが分かれるところですね。
バカガイは春が旬ということもあって、初春に美味しくなる「わけぎ」や「春せり」と合わせられることも多いです。
産地によって少し色合いと風味が異なる
東京湾などのものは赤色が強く、北海道のものは白っぽいです。
直接食べ比べたことがないのでわかりませんが、味は変わらないないけど風味は異なると言われています。
程よい甘味と特有の風味が特徴!「アオヤギの握り寿司」
バカガイを寿司ネタとする時には、少し湯引きすることが多いと思います。
あまり熱を通しすぎると固くなり、逆にあまりにも火が弱いとふにゃっとして食感が悪くなるので微調整が必要です。湯に通したあとは必ず氷水で締めましょう。
綺麗に湯引きができるとピンとしてツノが立ち、寿司としての見栄えも良くなります!
バカガイのクセをダイレクトに!「アオヤギの刺身」
バカガイは剥いた状態で流通していることが多いので、刺身にするのが簡単ですね。
ツルッと滑らかな舌触りに、アオヤギ特有の磯の香りをダイレクトに味わえるお刺身がおすすめです。
春野菜と一緒に!「アオヤギのぬた和え」
ぬた(饅)とは、高知県伝統のタレの一種で、味噌・酢・砂糖やからしをあわせたものになります。
これと一緒に、初春に時期を迎えるわけぎや春せりと一緒に和えるのがアオヤギの伝統的な食べ方でもあります。
これが一番好きかもしれない…!「アオヤギの小柱のかき揚げ」
舌切の部分は刺身やお寿司にして、小柱は集めてかき揚げにしましょう!
熱を通すことで貝柱はうま味や甘味が強くなります。竹の子やタラの芽、菜の花などの春野菜と合わせてもいいですね!