エゾボラ(マツブ)とはどんな貝?
エゾボラ(マツブ)とは、日本では主に北海道(国内の80%以上)で獲られるコリコリ食感がおいしい巻き貝です。北海道で多く獲られるので北海道ツブとも言われます。
殻長は平均で15センチほどであり、オスが12〜13センチほどで、メスは15〜16センチほどです。
ツブ貝・ツブとは本種のことを指す
ツブ貝と呼ばれる貝は多くありますが、基本的に「ツブ貝」というのはこのエゾボラ(マツブ)のことを指します。あまりエゾボラと呼ばれることは無く、ツブ貝、マツブ、ツブなどと呼ばれることのほうが多い印象です。ただし、飲食店でつぶ貝の刺身を頼んだ時にエゾボラ以外の貝が出てくることもままあるため、エゾボラが食べたい場合は確認が必要ですね笑
コリコリ食感が美味しく全国で人気が高い貝
エゾボラの特徴としては何と言っても貝らしいコリコリとした食感です。
水揚げ後も長く生きているため、鮮度劣化の心配が少なく、見た目も良くて味も良いということで全国的に広まりました。
居酒屋や、お寿司屋さんなどでよく提供される貝です。
貝殻の形状が無骨
エゾボラの貝殻の形状は、他の巻き貝と比較すると少し角ばっているのが特徴的です。
特に縫合部(螺層の合わせ目)や、螺肋が角ばっており、縦肋も盛り上がってヒダ状になっているのが本種の特徴です。他の似ている巻き貝とはこれらの点で見分けがつきます。
エゾボラの生態
エゾボラは、主には水深30〜200mくらいの砂泥底に生息しています。
海底の多毛類や有機物、魚の死肉などを筒状の口吻を使って食べる肉食の貝です。その食性を利用して、エサを入れたカゴを海底に沈めるカゴ漁などで漁獲されます。
エゾボラの産卵期
エゾボラの産卵期は地域差がありますが、主には3月から8月頃とされています。
交尾は2〜5月頃に行われるなど、生殖活動期間が長いです。
オスメス交尾を行って体内受精を行い、海中に産卵します。
産卵後の卵は孵化するまでに一年ほどかかり、幼生時期は無く、孵化する頃にはすでに貝の形をしています。
(参考:エゾボラ Neptunea polycostataの繁殖生態,特に成熟サイズ,生殖周期と性比について|日本水産学会誌)
エゾボラの旬
エゾボラの旬ですが、地域差が大きく、一概にいつが旬とは言えない印象です。
同じ北海道内でも、日高地方や稚内あたりだと4〜9月頃で、十勝あたりだと11月〜4月頃が食べ頃とされています。真逆ですね笑
(参考:魚介・海藻類/稚内観光情報 最北のまち稚内、大樹町のお魚カレンダー _ 北海道大樹町公式ホームページ、十勝のおさかな – 十勝総合振興局産業振興部水産課)
これらは旬というか水揚げ情報でもあり、エゾボラ以外も含みます。水揚げというのは基本的に旬の時期に合わせるものですが、地域によって諸事情はあると思います。
しかし産卵期から考えるとすれば、やはりエゾボラの旬は冬だと言えるでしょう。
あらゆる魚介は生殖活動や産卵を行う前の時期は、たくさんエサを食べて備えます。
しかし、生殖期・繁殖期に入ると途端にエサを食べなくなります。場合によってはほとんど食べません。サケなども産卵のために川を遡上する時は何も食べません。
そのため繁殖期前の時期が一番身に栄養を蓄えていることが多く、体力も損なわれていない状態です。さらには冬の寒さも相まって冬の時期は身が締まります。
エゾボラ(ツブ貝)の食べ方・調理方法
エゾボラは活けで流通することが多く、やはりコリコリとした食感が特徴的なため、刺身や寿司として食べるのが一番おすすめの食べ方だと言えます。
もちろん、お刺身以外にもバター焼き、串焼き、その他シーフード料理にしても美味しいですが、これらの調理方法については、エゾボラである必要があまりなく、他の近種のツブ貝などが冷凍で安く流通しているのでそれらを使うのがおすすめです。活けのエゾボラは高いですしね。
エゾボラの唾液腺は危険
肉食であるバイ貝やツブ貝には、「唾液腺」というものがあります。人間にもあります笑
唾液腺には捕食した獲物の消化を助ける働きがあります。
この唾液腺には、テトラミンという毒素が含まれていることがあり、エゾボラの唾液腺は有毒として有名です。
ツブ貝をさばくと分かるのですが、白っぽいブヨブヨした脂の塊のようなものがあります。(エゾボラの「アブラ」とも呼ばれます)これを取り除く必要があります。
もし唾液腺をそのまま食べてしまうと、めまい、痺れ、視覚異常などが起きます。
そのため必ず取り除きましょう。
しかし、この毒というのはお酒で酔っ払った感じに似ているということや、死亡例が無いということから、道民の中には気にせず食べるという人も多くいます笑
ツブ貝の殻を壊さずに身を取り出す方法
ツブ貝を刺身にする時はできれば肝も食べたいですし、何より特徴的な貝を器にしたいということから、貝を壊さずに取り出す手法がおすすめです。
やり方コンテンツをそのうち上げたいのですが、方法を簡単に説明すると写真の位置にキリやアイスピックを使って穴を開けます。殻はそこそこ硬いので、キリやアイスピックの先端を写真の位置に当てたら、出刃包丁などの背の部分でハンマーのように叩いて穴をあけます。
そして内側の殻を擦るようにして貝柱を外したら、サザエの壺抜きのようにクルっと取り外します。
成功すれば肝も含めて綺麗にスポッと抜けます。
失敗すると肝の部分が殻の中に残ってしまったりします。
エゾボラのおすすめの料理
前述したとおり、エゾボラのおすすめはお刺身です。
他の料理にしても十分美味しいですが、高価なエゾボラを使ってまでやる料理という感じはしません。
他のツブ貝で良いでしょう。
しかし、お刺身に関して言えば、他のツブ貝では味わえない美味しさがエゾボラにはあります。
見た目も迫力があっていいですしね。
コリコリ食感がやみつきに!「ツブ貝(エゾボラ)の刺身」
ツブ貝の刺身にドハマリするという人を僕は何人も見てきました。
ツブ貝の身を殻から取り出し、唾液腺(アブラ)を取り除いたら塩もみをします。
ある程度ぬめりが取れるまで塩でゴシゴシしましょう。
そうしたら洗って水気を拭き取り、削ぐように薄切りにしていきます。醤油なじみを良くするために波切り(包丁をうねらせながら切る方法)するのもおすすめです。
肝は鮮度が良ければ生で食べられますが、湯通しや煮付けもおすすめです。
刺身が美味いのだから当然寿司もうまい!「ツブ貝(エゾボラ)のお寿司」
お刺身が美味しいので当然寿司もうまいです!
回転寿司のツブ貝が好きという人も多いですよね。
ちなみに回転寿司のツブ貝もマツブです。エゾボラは高価なので何か似た貝で代用されているのでは?と思うかもしれませんがマツブです。
ただ、多くは輸入の貝の冷凍品で、オホーツク海やベーリング海で獲れたツブ貝になります。
オホーツク海などで取れるツブ貝にはエゾボラ以外にエゾボラモドキという貝が多くあります。それらは流通では区別されずに「マツブ」として流通するので、厳密にはエゾボラでは無いことが多いです。
ただ味は変わらずエゾボラモドキもとっても美味しいです!