アカザエビとはどんなエビ?

アカザエビとは、体長が約20センチほど、最大で25センチほどになる比較的大型になる深海性のエビで、長い鋏脚を持つため「手長エビ」として呼ばれることが多いエビです。
日本では千葉房総半島以南から宮崎日向灘までの太平洋沿岸に分布しています。
主な産地は駿河湾や土佐湾です。
手長エビ、スカンピ、ラングスティーヌなどなど、さまざまな呼ばれ方をする高級食材

標準和名はアカザエビ(藜蝦)と言います。
藜とは「アカザ」という植物の紅色の斑紋に体色が似ているとされたためアカザエビと名付けられたと言われています。実際にはレンガのようなオレンジ色の体色をしています。
英名は「Japanese lobster(ジャパニーズロブスター)」と言います。ジャパニーズロブスターと言えばどちらかと言えばイセエビじゃない?と個人的には思うのですが、英名ではそうなっています。
洋食で人気のエビ

ややこしいのが、イタリアや欧米では「Scampi(スカンピ・スキャンピ・スカンポ)」と呼ばれ、フランスでは「ラングスティーヌ」、日本では「手長エビ・テナガエビ」などと呼ばれます。
おそらくアカザエビという標準和名を知っている人のほうが少ないのではないでしょうか。
料理の世界では手長エビと呼ばれることが多いのですが、子どもの頃によく水場で釣りなどをしていた人からすると、手長エビと言えば、淡水の「テナガエビ」が真っ先に思い浮かぶと思います。
実際に淡水の「テナガエビ」は「テナガエビ」という名前が標準和名です。そのため標準和名でテナガエビと言えば淡水のエビのことになります(笑)
この淡水のテナガエビもかなりポピュラーなエビなため、私は本種はテナガエビとは言わずにアカザエビと呼ぶようにしております。
ちなみにアカザエビと言ってもさまざまなアカザエビがいます。(後述します)
アカザエビの特徴

アカザエビはイセエビなどと同じ歩行型の大型のエビです。
歩行型のエビというのは、泳いだりする浮遊型のエビと違って、泳がずに海底をのしのしと歩くため、外敵から身を守るために殻が硬く進化しています。

その見た目はザリガニを思わせるように、実際にザリガニ下目に分類されます。
そのためアカザエビは、「エビというよりザリガニ」という意見もありますが、それを言い出したら十脚目(エビ目)はみんなエビの仲間です(笑)カニもヤドカリもみんなエビから進化したものです。
アカザエビと言ってもさまざまな種類がいる

呼び名もさまざまですが、似たような近種もさまざまいます。
国内ではアカザエビの他に、サガミアカザエビ、ミナミアカザエビがいます。ちゃんとした写真が無くて申し訳ないのですが、簡単に説明します。
それぞれの違いや見分け方としては、一番大きくなるのがアカザエビ(20cmほど)です。その次にサガミアカザエビ(18cmほど)、ミナミアカザエビ(12cmほど)と続きます。
アカザエビはハサミの先端が白いのみで、他はほぼ均一に紅色・オレンジ色の体をしています。
それに対し、サガミアカザエビやミナミアカザエビは鋏脚が赤と白の紅白模様になっています。
この紅白模様が腕をぐるっと一周回っているものがサガミアカザエビ、表側(上側)だけ赤いのがミナミアカザエビです。ミナミアカザエビが一番個体数が少ないと言われています。
駿河湾ではアカザエビ、相模湾や土佐湾ではサガミアカザエビが多いように思います。
(参考:【ミナミアカザエビってどんなエビ?】 _ 美ら海だより _ 沖縄美ら海水族館 – 沖縄の美ら海を、次の世代へ。)
海外ではヨーロッパアカザエビ、ニュージーランドアカザエビが主に流通する

一般的にフレンチやイタリアンで使われるアカザエビとは「ヨーロッパアカザエビ」のことになります。
アカザエビと大きさは同じくらいですが、体の下側が白く、額角が日本のアカザエビのように長くなく短くて上に反りません。

ニュージーランドアカザエビはわかりやすく腹節と頭胸甲の境目に赤いリングのような模様が入っています。
アカザエビの生態

アカザエビは、水深200〜400メートルの深海域に生息しています。
そのため日本では、一番深い海である駿河湾が主な産地とされています。深海に生息するためまだ情報が少なく未知な部分も多いエビです。
アカザエビの産卵期
アカザエビの産卵は10月から11月の秋頃とされています。この時期にメスは直径2ミリほどの卵を400〜1500個ほど抱卵するとされています。
(参考:アカザエビ:静岡県水産・海洋技術研究所資源海洋科、アカザエビの産卵と孵化幼生の飼育)
アカザエビの旬
アカザエビの旬は地域により異なりますが、主に冬(12月頃)が旬と言われています。
地域差を考慮してみると晩秋(11月頃)から春(5月頃)頃までの時期が旬という印象です。
寒い時期に美味しいエビですね。
アカザエビの食べ方、おすすめの料理・調理方法

アカザエビについてはイタリアンやフレンチで人気の食材なため、ソテーやグリルなどの調理方法が定番でもあります。
ただ、もちろん生食も大変美味しいエビです。人によっては、これこそエビの中で最上の味と評価する人もいます。
自分の体験談ですが、初めてアカザエビを沼津から仕入れてお刺身で食べた時は「エビの刺身で一番美味いかも」と衝撃を感じたことを覚えています。
その後知人の店主に振る舞ったところ、その店主もお店の人たちも旨さに感激し、後日たくさんプレゼントしたりしました。
殻は硬いのですが、殻と身が離れやすいため刺身として剥くのは簡単です。
ただ、甲の額角や、胴体の殻の部分が鋭いので取り扱いには注意が必要です。

洋風料理で言えば、やはりシンプルに半分に割ってバターソテーしたり、おなか側から開いてグリルにするなどがシンプルで定番な食べ方です。
某ドラマの影響で手長エビのエチュベなんかも有名ですよね(笑)エチュベとは簡単に言えば「蒸し煮」になります。フランス料理の基本的な調理法の一つで、似た調理方法で他にはプレゼ、ポシェというものがありますよ。
プレゼは鍋に食材が半分ほど浸るくらいのブイヨンやワインなどで蒸し煮にするのに対し、エチュベとは少量の油と野菜などの食材に含まれる水分だけでサッと蒸す方法です。
ポシェは完全に食材が浸った状態でゆっくり弱火で煮る調理方法です。